2012 年5 月17 日
コラム♯572 「 日食観測グラス 」
太陽の動きや役割について最初に学んだのは、たしか小学校の理科の授業だったと思う。教師の指導に従い黒い下敷きを利用して太陽を見たのを覚えている。まぶしさを感じることなく太陽が見られ、子供心に感動したものだ。
だが、そのようにして太陽を観測するのは実に危険なことだったらしい。
5月21日の金環日食を前にラジオもテレビも盛り上がっているが、必ず添えられるのが「日食観測のときは専用グラスを準備するように」というアドバイスである。昔のように黒い下敷きを通しただけでは目に見える光量は軽減できても熱作用の大きな赤外線をカットすることはできないらしい。下手をすると網膜を傷つけてしまう恐れがあるそうだ。そうならないように専用の観測グラスは赤外線を反射する金属の薄膜を表面に取り付けているということなのだが、そんなことは今の今まで僕は知らなかった。
過酷なうさぎ跳びや運動部の練習中の水分摂取禁止など体に悪いことを良いことだと勘違いして昔は取り組んでいたものだが、まさか授業中にそれほど危険と隣り合わせのことをしていたとは・・・義務教育で身につけるような基本的な事柄でも、数十年前は知識不足がかなりあったのだろう。
それにしても「赤外線」や「網膜」といった言葉を出して科学的、医学的に諭されると、下敷きなどで太陽を見てしまったことを今更ながら後悔し、なんだか眼球がちりちりしてくる。病は気からというが、観測グラスなどとは無縁だった僕ぐらいの世代の中には急に不調を訴えて眼科を受診する人がいるのではないだろうか。
ところで空を見上げるのは、何もこのような天体ショーのときだけではない。高層建築物を見上げたときにうっかり太陽を直視してしまったという経験のある人は多いだろう。たとえ一瞬であっても目にはかなりのダメージになるはずだ。
数日後に開業する東京スカイツリーなどは大丈夫なのだろうか。
以前、スカイツリーの建設中に付近を通りかかったら寝転がってツリーを見上げている人がいた。今やツリーは完成して634mの高さで空にそびえたっている。ツリーの先端と空を視界に入れようとして横たわれば網膜をやられる危険性はかなり高い。
ちなみに今出回っている日食観測グラスでスカイツリーと金環日食を同時に見られるかを専門家に尋ねたところ、返ってきたのは「赤外線を遮断する専用グラスはサングラスとは違い、建築物などは見えなくなる」という答えだった。
しかし、科学の進歩は著しい。やがてスカイツリーと太陽を直射できるメガネが開発される可能性はある。
そのうち「網膜保護のため、専用グラスをかけない方のスカイツリー展望台への日中の入場はお断りします」などという指示が出るかもしれない。
スカイツリーの中にいる人たちがモグラの集団のようになる日は近い。
※ コラムは毎週木曜日の更新です。
次回更新は5月24日の予定
だが、そのようにして太陽を観測するのは実に危険なことだったらしい。
5月21日の金環日食を前にラジオもテレビも盛り上がっているが、必ず添えられるのが「日食観測のときは専用グラスを準備するように」というアドバイスである。昔のように黒い下敷きを通しただけでは目に見える光量は軽減できても熱作用の大きな赤外線をカットすることはできないらしい。下手をすると網膜を傷つけてしまう恐れがあるそうだ。そうならないように専用の観測グラスは赤外線を反射する金属の薄膜を表面に取り付けているということなのだが、そんなことは今の今まで僕は知らなかった。
過酷なうさぎ跳びや運動部の練習中の水分摂取禁止など体に悪いことを良いことだと勘違いして昔は取り組んでいたものだが、まさか授業中にそれほど危険と隣り合わせのことをしていたとは・・・義務教育で身につけるような基本的な事柄でも、数十年前は知識不足がかなりあったのだろう。
それにしても「赤外線」や「網膜」といった言葉を出して科学的、医学的に諭されると、下敷きなどで太陽を見てしまったことを今更ながら後悔し、なんだか眼球がちりちりしてくる。病は気からというが、観測グラスなどとは無縁だった僕ぐらいの世代の中には急に不調を訴えて眼科を受診する人がいるのではないだろうか。
ところで空を見上げるのは、何もこのような天体ショーのときだけではない。高層建築物を見上げたときにうっかり太陽を直視してしまったという経験のある人は多いだろう。たとえ一瞬であっても目にはかなりのダメージになるはずだ。
数日後に開業する東京スカイツリーなどは大丈夫なのだろうか。
以前、スカイツリーの建設中に付近を通りかかったら寝転がってツリーを見上げている人がいた。今やツリーは完成して634mの高さで空にそびえたっている。ツリーの先端と空を視界に入れようとして横たわれば網膜をやられる危険性はかなり高い。
ちなみに今出回っている日食観測グラスでスカイツリーと金環日食を同時に見られるかを専門家に尋ねたところ、返ってきたのは「赤外線を遮断する専用グラスはサングラスとは違い、建築物などは見えなくなる」という答えだった。
しかし、科学の進歩は著しい。やがてスカイツリーと太陽を直射できるメガネが開発される可能性はある。
そのうち「網膜保護のため、専用グラスをかけない方のスカイツリー展望台への日中の入場はお断りします」などという指示が出るかもしれない。
スカイツリーの中にいる人たちがモグラの集団のようになる日は近い。
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次回更新は5月24日の予定
