仮面舞踏会
栗本薫さんといえばグインサーガシリーズで有名ですが、
名探偵伊集院大介が活躍するミステリもマニアックな人気があります。
その伊集院探偵が活躍する『仮面舞踏会』を合評しました。
合評したのは、2011年8月20日金沢ミステリ倶楽部第37回例会で、参加者は14名でした。
この作品を提案したのは、現在のネット社会について当時としてはかなり早く取り上げた作品であり、伊集院大介という名探偵を知っていただくにはちょうどいい作品かと思った次第でありました。
栗本女史は謎解きや理論よりも、その文体や雰囲気を中心に描いていました。したがって、本格好きな方にはかなり不満の残る作品であったかもしれません。しかしながら、広義のミステリとしては、伊集院大介という絶対的な名探偵が解決していく過程を見るのは、まるで水戸黄門(笑)を見ているようで、大変に心惹かれる作品だと思うのは私だけだったでしょうか。後味はともかくとして。
○パソコンの2chをみている。人の悪口しかない。あまりいい印象がない。ウンチクの印象が強い。拒食症の患者さんはすごい。したがってこの話は有りうると思う。(人のせいにするな
ど)伊集院大介の博識はすごい。
○久しぶりに(この本を)読んだ。パソコン通信の初期の雰囲気がいい。ヲタク自身から自分の事を書いているのがむずがゆい。この事件はどう収束するのだろう(この小説の後日談的に)と感じた。大介のイメージは秀才でひょろっとしたイメージ。稔クンからのイメージは感情が爆発するような感じをうけた。
○チャットは楽しいけどやめられます(ご自分の体験談も交えて)。やめた方がいいです。大介は普通の探偵の感じがした。ぶっちゃけ解説がウザイ。
○この作品は初めて読んだ。ヲタクという表現…(すいません記憶がありません)。チャットの速度感を感じていた。昔は「相手は誰だろう」という外へ向かう感情でネットをしていたのだが、いまは「私は○○です」と内向きの感じでネットが進んでいる。歌野正午「密室殺人ゲーム」など現実とネットの二重構造を書いた作品もある。
○二人のヲタクの会話でつまずいた(面白くなかったってことですか(´;ω;`)…しかし)夫は伊集院大介に感心した。
○ヲタクの人たちはまめなんだろうか?(このミステリは)言葉だけで事件が解決してしまった。言葉のマジックをみているようだ。
○空想と現実の区別がつかない状況での殺人。いまよくある犯罪だといえばそうかも。一人しか殺されないので、そういう意味でも姫はいったいどうなったのか。つかみどころのない感じ
がする。
○読んだのは二回目。どうして稔君はダフネがいいとおもったのかな?ちょっとおかしい人を感じたのか?ぶっちゃけ何この気味悪いヲタク!と感じた。なんだろう?この世界は。主人
公とか周りの人が伊集院を讃えるのは栗本の手法かな。
○絶版で手に入れられず読めなかった。みんなの話を聞いて読みたくなった
○栗本さんのミステリは初めてかも。パソコン通信とはなんぞや。フロッピーディスクに(データを)落とした時点でついてはいけないかも(技術が古すぎて)。(伊集院は)ネットの状況だけでいろいろと決めつけていいのか?黒幕が○○として、主人公がその決着をつけないままなのはいかがなものか。
○栗本は天狼星でやめた。チャットで相手に感情移入してしまう。自分が手を下さずに殺人(自殺なのかもしれないが)というのは面白い。チャットで皆を集めて「さて」と言い。
○解決していないと思う。伏線が貼られていたはずなのに多くがそのまま残されている。ダフネさんは途中から別人のようになっている。別人オチかと思ったらそうではなかった。心理分析をされる手管がちょっと苦手。ロジックやトリックを解いて欲
しい。
○あんまり説得力がなかった。どろどろしたものも好きじゃない。ミステリなんだから、証拠とかなんとかあって解決だと思うけれど、よくわからないまま終わった。
以上…、あ、かなり批判的な意見が多く、担当者としてはかなり気まずい。あえて言うならば、前述もしたけれど、ミステリのなかに水戸黄門的なものがたまにあってもいいじゃないですか、と言う感じです。伊集院が解決していく様、ある意味ウザイですが、それはまあ、西洋のミステリにもあることなので、よしとしてください。読後感が悪いのは否定しませんが、伊集院が登場することはそもそも、まるでウルトラマンが登場して怪獣を退治するのに近いものがあるのだと、割り切って読むと、かなり楽しめます。
うーん、苦しい。
最後に伊集院シリーズはそのほとんどが本格ではありません。また人間の暗いところを描くものがほとんどです。つまり、現実に起こりうるかもしれない事件を書いているのかもしれません。
現実の殺人はその全てが暗く、後味が悪いものです。西洋のミステリ、特に本格ものは非現実な世界を描き、社会派は警察組織を、あるいは犯罪組織を描いてきました。伊集院は我々にだって起こるかもしれない、日常の事件を見せてくれているのかもしれません。
(といろいろ弁護してみました 文責 A・K)
投稿者:keita2at 09:00| お知らせ | コメント(0) | トラックバック(0)