<< 前のエントリトップページ
2016年12月04日

薬の話(7)認知症周辺症状の薬剤


BPSD(Behavioral and Psycological Symptoms of Dementia)は認知症において出現する周辺症状のことを指します。具体的には妄想、昼夜逆転、幻視・幻聴、暴言、暴行、介護への抵抗、不潔行為などがあります。薬剤には向精神病薬が使われることがあります。ただ本来、精神病に対して使用される使い方は参考にならないことがあります。特に用量の注意が必要です。認知症で使われる場合はきわめて少ない量で使うことを心掛けるる必要があります。高齢者では代謝能力(肝機能、腎機能)が低く異常に体内蓄積してしまうからです。向精神病薬は単純にいうと元気がなくなり「ふにゃっ」とさせてしまう薬剤なのです。寝たきりを薬剤でつくり出してしまうことにもなりかねないのです。長期に続けると薬剤性パーキンソン症候群を引き起こすこともあります。そのため最小容量の錠剤をさらに半分にしたり1/4錠にして調節することもあります。漢方薬ではそのような心配はないので幻覚などには抑肝散や抑肝散加陳皮半夏を使い効果を出すことがあります。ただ、これらの漢方薬は甘草を含むので特に老人に起きやすい偽アルドステロン症(高血圧、低カリウム血症)の注意が必要です。幻視で怖い物が見えて落ち着かない方では抗うつ薬がある程度効果します。機序は正確には分かりませんが、抗うつ薬の抗不安作用で出現する幻視が怖いものでなくなってきます。いわゆる安定剤は朦朧となることがあり使用しないようにしています。眠剤も最近出たロゼレムのような自然の眠りに近い薬剤のほうが良いように思います。

投稿者:KUSUat 20:38| 日記