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2017年11月03日

神経学会地方会 福井


セミナー 抗認知症薬の使い方 新阿武山病院 森本一成先生 認知症とは一度正常に達した認知機能が後天的な障害で持続的に低下し日常や社会で支障が出る状態のことです。65歳〜69歳人口の約2%が認知症で5年毎に倍になっていき85歳〜89歳では34%に認められます。63%がアルツハイマー病で血管性認知症、レビー小体病と続きます。治療には薬物療法、非薬物療法、適切なケアの三つの方法を組み合わせて効果をあげることが必要です。介護サービスの利用や家庭での対処法の改善が急務です。医師は薬物療法に主に関わることになります。2系統の薬剤があります。アミロイドカスケード仮説に依る薬剤は3種類あります。ドネペジルは感情賦活の作用が特徴で無気力で反応性に乏しい場合に良いですが、活動性を高めて問題を起こすこともあるので留意しておきます。血中半減期が90時間あるので一日一回の服用でよいのですが過剰に服用する傾向の方には注意が必要です。ガランタミンは半減期が短く一日二回の服用が必要です。注意力や言語力の改善が期待され脳血管性認知症にも効果があるといわれます。更に効果を維持できる年月が長い特徴があります。リバスチグミンは貼付薬で一日一回の使用です。前頭葉の血流を上げADLの改善に効果があります。半減期は短いのでパッチをはがすと短時間で血中濃度は下がります。貼付で皮膚炎を起こす場合は保湿剤を併用します。表情がよくなり判断力、会話、実行機能が改善します。以上の薬剤の効果判定はいろいろなスケールで測定しますが、半年以上能力を維持できていれば効果があると考えてよいと思います。ただし、良い刺激良いケアが伴わないといけません。グルタミン酸仮説に依るものは1種類です。メマンチンは神経細胞へのカルシウムの流入をブロックし細胞を保護し病気の進行を抑制します。また神経細胞に入るノイズとしての刺激を抑制します。周辺症状にも効果があり特に攻撃性を抑えます。不安感の強い軽症な時期の患者さんにも有用です。他の抗認知症薬との併用はどれでも可で3ケ月で併用の優位が確定してきます。以上の特徴を意識して抗認知症薬を使い分けることで認知症患者に対する対応力のレベルを上げることができます。

投稿者:KUSUat 23:21| 日記