2024年10月13日
神経学会特別教育研修 認知症
認知症最近の話題としては抗アミロイドβ抗体薬が上市されアルツハイマー病(AD)によるMCIに対しての治療薬として期待される。診断するためのアミロイドPETや脳脊髄液Aβ測定などの新技術も保険適応となった。病理的にはアミロイド病理はタウ沈着へと移り変わるがタウ病理は神経原繊維変化として知られる。タウ病理はアミロイド病理が存在しないと進展しない。タウ、Aβ、αシヌクレインなどはseeding活性をもち、異分子は主にシナプスを介して細胞から細胞へ伝播(propagation)する。バイオマーカーとしてアミロイドPET,タウPETなど画像によるものや血中Aβ測定など血中バイオマーカー測定など有望な計測法が確立されつつある。これまで想定されていたMCIから認知症に移行する割合は近年予測を下まわる傾向にある。これには禁煙や高血圧、糖尿治療予防の影響が考えられている。日常診療においての認知症診断ではそれぞれの疾患の特徴が参考になる。前頭側頭型認知症の発症は65歳前が多い。ADではMMSEにおける3語の遅延再生が0点図形模写の構成障害が特徴となる。DLBでは図形が小さくなる。また認知症診断では難聴や薬物(睡眠薬、抗不安薬など)の影響を除外する必要が有る。物忘れ=ADではない。感情を伴う記憶は作られやすく残り易いということは考慮して判断する。家族が訴える物忘れは病気である可能性が高い。固有名詞を忘れるよりトイレの水の流し忘れや最近のニュースが残っているかなどを質問します。注意力の障害は進行性核上麻痺、レビー小体認知症に目立ちます。BPSDの薬物療法では環境調整、対応の工夫、便秘疼痛の対応など非薬物療法を先ず行います。抗精神病薬の使用も考えられるが安全性の高い漢方薬も検討する価値がある。抑肝散(興奮、攻撃性、幻覚、妄想)、抑肝散加陳皮半夏(食欲不振、)、人参養栄湯(食欲不振、フレイル)が考えられる。甘草を含むため低カリウム血症に注意が必要である。うつには補剤である補中益気湯、人参養栄湯、加味帰脾湯が考えられる。認知症の中でレビー小体認知症が介護度が高く自律神経障害がADより多い。RBD(レム睡眠行動障害)や嗅覚低下がある。パーキンソニズム治療にはレボドーパ、ゾニサミドを使うことが出来る。