2017年10月13日
不全型とバリエイション
病気と健康は対極であるが実際には単純に白黒と判断されるものではない。その程度は両者の間で切れ目のない割合で移行していると考えるのが自然である。病気の診断ではこのことが大きく影響する。いわゆる不全型やバリエイションが珍しいことでは決してなく、むしろ多いと考えたほうが日常的であるといえる。特に市井の医療機関は病気の初期を診る頻度が高いためもあり尚更である。医療界では病気は進行すると診断しやすくなるため「後から診る医者ほど名医」と言われることわざがあるため、前医の悪口を言うお医者さんはあまりいない。不全型やバリエイションの診断は難しい。しかし診断が当たって上手く治療に結び付いた時は嬉しいものである。最近、側頭動脈炎と思われた例が2人あった。一例目は77歳の男性で右頭頂部痛。浅側頭動脈の圧痛は認めないが頭頂部の一部に触れると強い痛みを訴える。外見上は頭皮に異常は認めなかった。痛みはかなり痛いようであった。側頭動脈に圧痛の無い側頭動脈炎はあるのか迷ったが、動脈末梢に起きた動脈炎と考えてみてステロイド投与し急速な改善を得た。炎症反応(CRP)は±であった。二例目は79歳の女性で左後頚部から後頭部の痛み。左に強い両側後頭神経の圧痛、左浅側頭動脈の圧痛を認めた。左後頭神経の圧痛が最も強く、神経ブロックを行った。しかしブロックでは痛みは改善しなかった。左後頭動脈分枝に炎症の主座がある側頭動脈炎と考えステロイド投与し著明な改善を得た。後頭神経の圧痛の所見は実は後頭動脈の圧痛であったのであろう。ただし、これまでは診たことがない。いづれもヒントは顔をしかめるような痛みであった。
投稿者:KUSUat 18:59| 日記