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2020年12月01日

リモート医療の落とし穴




リモート医療は離島や僻地での医療に大いに役立つ可能性があります。現在、新型コロナウイルス対策で接触時間や機会を減らす方法として一時的に使われています。普段診察を受けておられる方で変化の無い場合は支障は少ないと思われます。医療産業は人手のかかる産業で省力化、効率化が課題となっています。専門性の強い領域ですので医療内容を勘案しながら進めなければなりません。これまでリモート医療は産業界と政府により医療合理化の有力手段として導入の圧力がありました。それは初診よりリモート医療をするというものでした。確かに医師の偏在や患者の偏在を調整したり一人の医師で診る患者数を増やす手段となる可能性はあります。ただし全くの初診の患者をリモートで診察する勇気のある医師は殆どいないと思います。初診では簡単なそうに思える場合でも膨大な変数を処理していく過程があります。この場合に実際の患者がいないとできないことが多数あります。情況が安定している場合や緊急の際はリモート医療は医療の質を高め生産性を上げることができます。最近の経験で、普段診ている方より発熱があるがどうしたら良いかの電話がありました。娘さんが風邪にかかり、ついで自身が発熱したとのことでした。当然コロナのことを考えますが娘さんは他医で感冒の診断を受け改善していました。ただコロナは否定できていません。呼吸器症状や腹部症状、尿路症状の訴えはなかったのですが来院せず風邪薬(漢方)を出して経過を診ることにしました。しかし熱は一時下がったものの持続したのです。そこで総合病院内科に発熱有ということで紹介したのです。新型コロナウイルス抗原(-)インフルエンザ抗原(−)胸部CT(異常なし)尿中白血球(3+)尿中赤血球(3+)で腎盂炎のようでした。腎盂炎は高熱以外に他症状のない発熱では必ずチェックする病気です。コロナ禍が無ければ来院してもらって検尿で直ぐに診断できたはずでした。同居の娘さんが風邪をひいているという情報とコロナ禍で電話診療が可能という状況が作用したことは間違いがありません。

投稿者:KUSUat 09:19| 日記