2022年06月09日
不思議な振戦
振戦(振え)はめずらしい現象ではないが原因誘因は多彩である。緊張した時に起きる振えは武者震いと言われることもあり殆んどの人が経験する。風邪などで急激に体温が上昇するときも振えがくる。これは悪寒戦慄という形で出てくる。免疫力を高めるため体温を上昇させる一連の反応と思えば理解できる。動物の発熱システムとして筋肉が使われているのだと思う。甲状腺機能亢進症では細かな振るえが出る。パーキンソン病の症状の一つとして静止時振戦が特徴と言われる。先日、四肢の振るえを訴えて来られた方があり、聞くと最近転びやすくなっているとの話であった。診察すると左右差のある軽度のこわばり(固縮)が有り、パーキンソン病であろうと思ったが振戦については念のため甲状腺ホルモンを測定しておいた。結果は甲状腺ホルモンの異常高値があり甲状腺機能亢進症であった。では固縮や転びやすさは何なのか。二つの病気が重なるのはめずらしいがパーキンソン病の精密検査も予定することにした。本態性振戦はめずらしい疾患ではないが高齢になると目立ってくることが多い。最近出会った振戦は点滴をしたり水分補給をしっかりやってもらって改善したので、脱水によっても振戦が誘発されること体験した。二人とも80歳を越えた方で一人は施設入所の人で自分では積極的に水分を摂らない人で点滴後振戦は消失した。もう一人は認知症の方で長い間で水分不足になっていたようだ。自宅なので家人に水分補給を管理してもらい振戦は消失した。脱水による振戦はこれまで経験したことがなく、また文献や学会での報告も見たことがなかったので貴重な体験であった。
投稿者:KUSUat 23:04| 日記