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2019年04月25日

学術講演 便秘について




慢性便秘治療のこれから 横浜市立大学肝胆膵消化器病学 中島淳教授
60歳を越えると便秘の方が増えてきます。便秘では生存率が低くなります。女性では心血管イベントが増えることが分かっています。排便時の力みは収縮期血圧を70mmHg以上も上げます。トイレでの心停止やクモ膜下出血にも関係します。便秘のコントロールで血圧上昇トリガーの低減が図れます。寒さや便秘の力みはトリガーイベントを増やします。慢性呼吸不全ではトイレで力むと低酸素血症をきたします。排便回数は1日から2日に1回が正常です。排便困難では硬便は力みを増やし残便、頻回便の原因になります。原因として続発性のものでは薬剤に注意が必要です。オピオイド、Ca拮抗薬、精神科の薬、パーキンソン病の薬などがあります。原発性としては出口障害があります。直腸は恥骨直腸筋で前方に引かれ「く」の字になり便を貯めるようになっていて肛門括約筋は締まって便の漏れを防いでいます。正常の排便は力むと前者の筋が緩み直腸がまっすぐになり肛門下降が起き括約筋は緩み排便へと導かれます。便秘治療は迅速な完全排便を目指すことを目標にします。便の硬さはバナナ状の便が最適です。泥状では直腸に貯まった便はS字状結腸に逆流して半分しか出ないのです。日本でよく使われる酸化マグネシウム(カマ)は胃酸で活性化するため食後に服用します。しかし日本以外ではあまり使われず高Mg血症の危険性が付きまといます。eGFRが60以下や脱水になりやすい条件の人は避けるべきです。PPI,活性型D製剤、利尿剤併用は避けます。刺激性の下剤は屯用で使うべきで長期連用では効果が減衰し、やがて大腸が障害され動かなくなります。
現在使い易い薬剤ではリンゼス、アミテイーザ、グーフィス、PEG、ラクツロースがあります。便秘型過敏性腸症候群ではリンゼスが腹部不快感にも効果があるためよく使います。アミテイーザは若い女性では悪心に注意が必要です。食生活は大事で便秘は先ず食事を摂らないと悪化します。トイレは前かがみ35度が良く、実は和式のしゃがむ姿勢の排便は便秘にはよかったのです。患者さんの中には漢方を希望される方もありますが印象としては麻子仁丸が使い易いようです。

投稿者:KUSUat 22:47| 日記