2019年9月11日
日本医師会かかりつけ医機能研修 感染症(1)
感染対策(1)石川県医師会 高田重男副会長 診療の要点は患者背景の理解、どの臓器の問題か、原因微生物は、抗菌薬の選択、適切な経過観察の5点です。 患者背景では国際化、交通の発達でこれまでにない疾患と遭遇することになり診断対処に問題が生じます。海外からの麻疹、デング熱、中東呼吸器症候群の例などあります。風疹では耳介後部のリンパ節の腫脹が特徴的です。水痘は日本では子供の病気ですが中国やベトナムでは成人の罹患もめずらしくありません。麻疹、水痘は発熱発疹をきたせば空気感染するので隔離が必要です。エボラ出血熱は接触感染なのでそれを念頭におきます。超高齢化社会では老人に現れる症状は非特異的です。高齢者は免疫不全、生理機能低下、栄養不良があります。典型的感染徴候に欠け体温の上昇がない時があります。 どの臓器の問題かは高齢者では難しく、肺炎診断は難渋します。75歳以上で38度以上の発熱は30%脈拍100以上は37%です。全身的活力低下、転倒、食欲不振、せん妄などを呈します。高齢者が感冒に見え症状が乏しい時は心内膜炎、椎体椎間板炎、肺炎、胆嚢炎も考慮します。 原因微生物は確定して治療を進めるのが最善ですが、判定に時間がかかる場合は最も頻度の高い病原菌に対して治療を開始し、確定後に修正があれば行います。感染防止対策は標準予防策では手指衛生、適切な個人防護具使用、咳エチケット、安全な注射手技、環境整備があります。経路別感染予防策では接触感染(ノロ)、飛沫感染(インフルエンザ、風疹、多くの呼吸器感染)、空気感染(麻疹、水痘、結核)に分け対策します。空気感染ではN95マスク、陰圧個室で対応します。また宿主の防御能を高め予防するには予防接種、予防投与、健康管理があります。口腔ケアで術後肺炎や高齢者肺炎が減少します。