2020年2月26日
帽状腱膜下血腫の治療
帽状腱膜下血腫は乳幼児期の頭部打撲や出産時の吸引などの際に生ずることがあります。頭皮下にプヨプヨした液体を感ずることができる膨隆になります。 この時期、帽状腱膜と骨膜との接着がゆるいために生じやすいと考えられています。頭蓋骨の外ですので脳に影響を与えることはありません。 しかし新生児など体重が少ない頃に出現すると、循環血液がそこへ貯まっていくことになり貧血やショックになる可能性があります。また安易に穿刺して抜いても再貯留すれば更に事態は悪化します。ただ多くは時間を経て自然に消退していきます。しかし大きなものになると対処に苦労します。 このことについて最近の数年間に興味深い体験をしています。当クリニックでも時々小児の頭部打撲を診察することがあります。小児は頭部打撲に対しての感受性が高く自家中毒のような症状を出すことがあります。吐き気や嘔吐をきたしやすいのです。この予防に漢方の五苓散が効果します。五苓散は副作用がなく大変使い易い漢方薬です。最近は脳外科では慢性硬膜下血腫の再発予防にも使われます。今回3例の頭部打撲の小児に五苓散を使用したところ数日以内の投与でたまたまあった帽状腱膜下血腫が急速に消退治癒したのです。自然治癒もあるので偶然の要素も否定はできないのですが五苓散投与のリスクはないのでもう少し症例を重ねて結果を確定できれば有難いことです。