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2021年7月26日

睡眠時無呼吸症候群の課題




睡眠時無呼吸症候群(SAS)はこれまで検査方法が簡易でなかったため、はっきりした症状のある方だけが検査される状況でした。最近、身体的負担が殆んどない簡易装置が使えるようになり当院でも昨年9月より検査を始めました。先ず動脈硬化の悪化因子が少ないはずの若年脳血管障害の患者さんから行いました。結果はほぼ全例に近い頻度でSASが確認されました。その後、高年齢の脳血管障害の方や夕方の強い眠気、下がり難い高血圧、いびき、心房細動、肥満、小さな下顎などの方へと簡易終夜睡眠ポリグラフィー施行の範囲を広げていきました。やはり高頻度でSASが認められました。SASで程度が強い場合は治療が必要になります。最も有力な方法の一つが持続陽圧呼吸(CPAP continuous positive airway pressiure)です。これは鼻にマスクを装着して器械で気道内に陽圧をかける方法です。この装着が上手く維持できれば即座に無呼吸症状を改善することができます。ただ装着には慣れと時間が必要です。また最初から拒絶的な人もあります。この装着がいかに重要なことなのかは試しに深呼吸せずに1分間息を止めれば実感できます。しかし睡眠中は麻酔のかかったような状態なので痛くも痒くもないのです。想像力をはたらかすことは難しいのが現状です。CPAP導入に成功するための方法を模索中です。SASの知識がもっと知られるようにすることも必要です。SASの患者さんは想像以上に多いように思います。

投稿者:KUSUat 23:01 | 日記

2021年7月12日

パーキンソン病診療を考える会 滋賀




進行期パーキンソン病の治療  仙台西多賀病院 
武田篤院長  L-dopaは治療上必須の薬剤で出現前と比べて生命予後をかなり改善しました。ただ単独使用では半減期が短く2時間で効果が無くなったり食事の影響で効果が減弱したりします。現在、代謝を遅らせ血中濃度を保つためカルビドパやベンセラジドとの合剤で使用されています。症状の進行に伴い投与量が300mg〜400mg/日を越えるようになるとウエアリングオフやジスキネジアが出現してきます。神経終末の減少が進みドーパミンを末梢に蓄えられなくなりドーパミン濃度の上下が大きくなり過敏性が出現します。末梢での代謝の別ルートを阻害することで血中濃度を保つための薬剤にエンタカポンがあります。ただ効果時間が短く2時間程度です。そのためL-dopaと同時の服用が必要になります。最近発売されたオピカポンは24時間の効果が期待されます。オピカポンは空腹時に吸収が良いため食事から1時間以上離す服用が必要です。そのため就寝前がお勧めです。またL-dopa服用と重ならないようにします。オフになる時は報酬系のドーパミンも低下するため辛くなったり痛みを感じたりすることがあります。このような場合オピカポン、SSRI、MAOB阻害薬を使うと改善することがあります。オピカポンとL-dopa合剤の組み合わせではベンセラジド配合剤の方が配合比の面で効果が高いように感じています。

投稿者:KUSUat 14:51 | 日記

2021年7月3日

神経学会東海北陸 神経核内封入体病




臨床症状が多彩で診断に難渋する疾患に神経核内封入体病がある。中枢神経系や末梢神経系の神経細胞などや一般臓器細胞の細胞核内にエオジン好性の封入体を認めるのが特徴であるが、その部位や程度が様々であるため他の疾患と間違われてしまうことが多い。今回の地方会では3つの発表があったが一過性の視野障害、繰り返す意識障害、進行性の視力障害とバラバラであった。発症年齢は乳児期から60歳代までと幅広いため臨床診断は困難とされてきた。高齢発症では物忘れを主訴に受診される方もあり他の代表的な認知症と鑑別を要する事になる。血管障害様の病像を示したり、意識障害発熱頭痛など脳炎様症状を呈するものや痙攣発作を起こすものも見られる。参考になる検査としてはMRI拡散強調画像で皮髄境界領域に沿った高信号領域が特徴的であるが中に高信号をていさないものもあるという報告もあり単純でないようだ。MRIで上記所見をつかんだ場合は皮膚生検を行い核内封入体を確認できれば診断が確定する。また遺伝子検査も考慮される。ただ現時点では根本的な治療法は確立されていない。

投稿者:KUSUat 23:37 | 日記

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