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2021年6月21日

集団ワクチン接種への出務




医師会では市の新型コロナウイルスワクチン集団接種に協力して49医療機関が出務することになりました。ドクター1名看護師2名が基本的なチーム構成で市内3ヶ所に設定された会場に2チームづつ出張し接種します。会場では検温、受付業務や書類チェック、人の誘導、接種後の経過観察にも人員が配置されています。ワクチンのバイアルから分けて注射器へ移す業務は薬剤師の仕事です。ドクターは問診表の確認、体調の確認を行い当日接種の可否を判断し、可であれば看護師が注射する流れです。また異常事態に初期対応するための薬剤や機材が準備してありますが点検しておくことは必要です。今回初めての出務で2チームで3時間で135人でした。特別な反応を示した方はありませんでした。もう少し慣れてくれば接種人数を増やしたり人員の削減が可能になるかもしれません。初めての試みなので多少過剰対応になるのはしかたがないと思います。集団接種の他に医療機関での接種があります。私のクリニックではワクチンの使用を5人単位にまとめることが難しいことと温度管理が難しいことを考慮してワクチン接種には参加しませんでした。ただデリバリーシステムが洗練され管理条件が緩和されれば参加できるかと考えています。 ワクチンの接種対象の選択には二つの基準で戦略的に決めていくことが重要だと思います。一つは死亡可能性の高い弱者(多くは高齢者)からです。もう一つは責任や重要な役割をもった人々です。医療関係者は罹患すると医療機関が止まってしまうので必要です。さらに首相や大臣、国会議員、自治体首長が罹患すると国家の機能が麻痺して甚大な被害を生じます。国の命運を左右するのです。現在の日本では「自分が打つ」と自ら言うことのできた政治家は見当たりませんでした。与野党通じて当事者意識が低いのかまたは選挙民が怖いのか分かりませんが国家の危機管理能力は最低と言っても言い過ぎではないと思ってしまいます。マスコミも誰々が先に打ったなどを記事にして煽っているのも実に意識の低いことです。決定したり判断したり命令する人々、現場でリスクを負って働く人を中心に接種を進めることが重要だと思います。また感染の中心地域に集中して行うのも流行を広めないという観点からは必要です。今回の世界的国家的体験を未来にむけて活かすことができれば日本にも希望があるかも知れません。

投稿者:KUSUat 16:26 | 日記

2021年6月13日

内科学会北陸地方会 教育講演 認知症




認知症 早期の介入の必要性が言われています。高齢になるほど割合は増え75歳で1割95歳では7,8割が認知症になっています。半数はアルツハイマー型認知症で慢性に進行し物忘れが主体です。両側海馬の容積が減少し脳血流検査で側頭頭頂、後部帯状回の血流低下が特徴的です。病理学的には神経細胞へのAβタンパクの沈着(老人斑)タウ蛋白の沈着による神経原線維変化で特徴づけられます。レビー小体型認知症は幻視(子供の頻度が高く、かつ足元が見えないことが多い)やレム睡眠行動異常(RBD)が出ます。脳血流検査ではアルツハイマー型+後頭葉での低下が特徴です。神経細胞へのαーシヌクレインの蓄積が生じます。これはパーキンソン病と同様ですが分布には少なくとも初期には差があります。前頭側頭型認知症は意欲の低下が目立ち勝手な行動や逸脱行為が特徴です。.  アルツハイマー型認知症の治療は神経伝達物質の減少を防ぐドネペジルや神経細胞壊死を減らすメマンチンがあります。特にこの両者の併用は非使用例と比べ病気の進行が遅くなっています。メマンチンは中等症からの使用となっていますが早期からの使用が効果的との考えもあります。発症そのものを防ぐ薬剤の開発も進められてきましたが、つい先日最初の使用認可がでました。ただ色々な課題があります。診断では血液でできる方法が模索されています。予防では有力なものはありませんがMCIではスタチンが進行予防に寄与するといわれます。また有酸素運動は海馬の容積の復元効果があるという報告もあります。  レビー小体型認知症の治療ではドネペジルが使われます。幻視には抑肝散の有効性が言われています。  前頭側頭型認知症で有効性のある薬剤は現時点ではありません。

投稿者:KUSUat 19:51 | 日記

2021年6月5日

群発性頭痛治療の新たな展開




群発性頭痛は20代から40代の男性に多く見られる頭痛で一側眼窩を中心に激烈な痛みを生じます。数時間で自然に改善することが多いが痛みで床を転げまわることもあるといわれます。そのため狂言と間違われ親族や周囲の人に?りつけられることもあり大変です。そのような痛みが群発(毎日のように)し通常1〜2月ぐらい続きます。以前はこの病気はあまり知られていませんでしたが世の中の認識も変わってきました。季節の変わり目などに出やすく最近1か月の間に3人の患者さんがありました。男性2人女性1人でした。20年以上前は酸素吸入以外に有効な手段はありませんでした。そのため患者さんの自宅に酸素ボンベを備えてもらったこともあります。現在は医療法の整備で勝手な使用ができなくなっています。その後片頭痛発作を改善するトリプタン系薬剤が効果があることが実証され使われるようになってきました。しかしこの薬剤は1日使用量が限られており長期大量使用も良くないとされています。予防にはベラパミルやバルプロ酸が使われるようですがあまり期待できません。ステロイドは効果はあるのですが体重増加や免疫力低下の影響があるためトリプタン系薬剤の使用が過多になる場合にやむなく使います。また間に在宅酸素使用をいれて薬剤使用量を減らす工夫も必要です。群発性頭痛の原因は不明ですが水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)が関与しているという説があります。94例の群発性頭痛の患者でVZVワクチン接種し4年以上の経過観察で9割に有効であったとの報告があります。これが本当であれば有難いことです。VZVワクチンは保険がきかないので自費となるのでむやみに薦めるのは憚られました。昨年何度目かの発作で受診された40代の方があり、御自身でワクチンのことを調べて希望されたのです。それで発作が終わって数か月後の今年三月にVZVワクチンを接種しました。これで数年間再発がなければ効果が確かめられるわけです。もう一つ朗報があります。この4月に新しい片頭痛の予防薬(ガルカネズマブ ?エムガルテイ)がでました。月に1回の注射で慢性片頭痛、反復性片頭痛を予防できるのです。現在は適応が取れていませんが先行使用国では群発性頭痛にも使われているようです。以上の様な新たな治療法が効果あるものであれば、これからの群発性頭痛の治療は随分とスマートなものになると思われます。

投稿者:KUSUat 21:24 | 日記

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