2021年9月26日
装置産業と医療
この半世紀の間で医療診断機器の発達はめざましいものがあります。中でもCTスキャンとそれに次ぐMRIは脳神経系疾患には欠かせない重要な診断機器です。少なくともCTスキャンが使えないと医療精度が数段下がってしまいます。ただ高額で維持費もかかるので手軽に導入することに制約があります。現代では診療科にもよりますが医療は装置産業化しているといえます。また装置は陳腐化し劣化していきます。このような場合様々な工夫が行われます。一つは大事に使うということです。不必要な稼働は避け機器に負担を掛けないようにします。CTの使用では頭部に関しては両方可能ですがヘリカル法でなくコンベンショナル法を原則採用しています。コンベンショナルスキャンは空間分解能が高く低い線量で撮像できるため人体への照射線量を減らしCTスキャナーの負荷もへらします。約1/3の線量で撮像できるのです。 ヘリカルスキャンで高画質を得るにはS/N比を高くする必要があり高線量になります。また機器の持っている機能を最大限使うことも重要です。当院のCTスキャナーのスライス幅は0.625mmです。この薄さであれば、どのような方向角度の断面を再構成しても画質の劣化がありません。通常は軸位でのスキャン後、そのデータを使い冠状断(前から見た断面)矢状断(横から見た断面)の画像を作成しています。この方法を一般では未だルーチンに行っている施設は見かけません。3方向からの判読によって診断を的確にすることができるのです。機器の進化は留まることががありません。遅れないようにすることに大きなプレッシャーがあります。