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2023年7月19日

ペマフィブラートについて (2)


スタチン投与下の高中性脂肪血症介入治療の意義  国立循環器病研究センター病院 心臓血管内科 片岡有先生  冠動脈疾患でLDL-Cの値を欧州では50mg/dL未満、日本では70mg/dL未満とすることが推奨されています。しかし70mg/dL未満に制御しても20%の患者でプラークの進展が認められました。またLDL-Cを下げていても中性脂肪が300mg/dL以上あるとプラークの進展がみられることがあります。中性脂肪と冠動脈プラークの関係は200mg/dL以上あればプラークの進展可能性が高くなります。LDLやカイロミクロンのレムナント(残り屑)は小さいので血管壁に取り込まれやすくプラークを進展させます。またレムナントは炎症を惹起します。LDL-Cの管理にもかかわらずプラークの進展があるのは残余リスクが存在すると考えなければなりません。HbA1cの高値、CRPの高値、中性脂肪の高値等あります。LDL-Cを下げるスタチン、エゼチミブは中性脂肪を10〜20%下げます。中性脂肪を下げるフィブラート系薬剤は中性脂肪高値に効果的です。ただし血中クレアチニン値を上げる作用があります。ペマフィブラート(パルモデイア)は中性脂肪を42〜43%下げ動脈硬化を防ぐApolipoprotein A-2を増やし、動脈硬化をおこすApolipoprotein Bを下げます。また炎症を抑えフィブリノーゲンも抑えます。高用量のスタチンは石灰化を促進しますがプラーク内の脂質が減少しプラークが安定することが関係していると思われます。罹病期間が10年以上になると薬剤効果は落ちるので効果判定のプロジェクトではそのような患者を除外した評価が必要と考えます。随時採血で中性脂肪200mg/dL以上は冠動脈疾患のリスクを上げていると考えるのが良いと思います。ペマフィブラートは使用し易く効果のある薬剤と認識しています。

投稿者:KUSUat 23:35 | 日記

2023年7月6日

レクチャー レビー小体認知症


レビー小体型認知症(DLB)について 東京医科歯科大学脳神経病態学 三條伸夫特任教授 現在認知症に関してはMCI(軽度認知障害)は経過観察で、認知症に至って治療が開始されます。ただこれまで症状が出現してから根本的治療をしてみて効果がないことが分かってきました。根本治療はMCIまたは前駆期より開始する必要が有ります。アルツハイマー型認知症(AD)ではレカネマブ等が使用できる状況になってきました。MCIもDLBではADと異なります。記憶障害は目立たないことがありRBD(レム睡眠行動障害)、自律神経障害、嗅覚障害、視空間障害、パーキンソン症状が特徴として考えられます。このためMBI(mild behavial impairment)という表現がDLBの場合適切と思われます。 DLBの診断では(1)注意力の低下、認知の変動(2)繰り返す幻視(3)RBD(4)パーキンソニズムの中で二つ以上該当すれば確定します。またこれらの項目の一つとバイオマーカーのDAT-SCAN(感度75%〜95%特異度15%〜95%),心筋MIBG(感度70%〜95%特異度90%〜98%),終夜睡眠ポリグラフィー(PSG)でのRBDの所見の一つ以上で確定診断することも出来ます。またBLDは向精神薬に対して過敏性があり転倒、失行、一過性無反応、自律神経障害を誘発するリスクがあります。CT,MRIで側頭葉内側面は比較的保たれます。ただしADを合併することが有ることを忘れてはいけません。SPECTでは後頭葉の血流低下を認めます。後帯状皮質の血流は温存されこれをCingulate Island Signと呼び特徴的であるとされます。治療ではドネペジル3mgから始め効果良ければ増量せず続けます。ADもDLBもMMSEで一年間で4点以上低下するようであれば薬の増量を考えます。パーキンソン症状については基本はレボドパを少量より開始します。ドパミンアゴニストは精神症状を悪化させることがあり使いません。ゾニサミドは副作用が目立たず使い易い薬剤と考えています。

投稿者:KUSUat 23:29 | 日記

2023年7月3日

セミナーHIF-PH阻害薬の適正使用


慢性腎臓病(CKD)に伴う貧血治療 兵庫医科大学循環器・腎透析内科学 倉賀野隆裕教授 CKDが原因の貧血では腎での造血ホルモンのエリスロポエチン(EPO)の産生低下によるものとEPO以外の原因によるものがあり鉄代謝の異常が考えられます。鉄欠乏性貧血では血清鉄が低下し同時にフェリチンも下がります。一方鉄利用障害では血清鉄は充足されておりフェリチンは正常または増加しています。CKDにおいては多くの患者で鉄利用障害を伴うことが分かっています。小児のCKDの統計ですがステージが悪化するほど鉄利用障害の率が高くなります。Hepcidinは肝臓で産生され鉄過剰で増加し鉄の低下で減少します。 過剰な鉄は脾臓、肝臓に沈着します。高フェリチン群は10年から20年後に心血管障害の形などで生命予後が悪くなる傾向があります。細胞死にはネクローシス、アポトーシスなど様々な形がありますが鉄代謝異常によるフェロトーシスという概念も提唱されています。WHOでは鉄欠乏、鉄過剰の診断ではフェリチン値を使うことを推奨しています。またTSAT(トランスフェリン飽和度)と組み合わせて使い診断治療精度上げることができる。低酸素誘導因子(HIF)はVEGF(血管内皮増殖因子)、EPO等の発現を誘導します。HIF-PH(プロリン水酸化酵素)はその物質を分解する酵素で、このHIF-PHを抑えるのがHIF-PH阻害薬です。現在2種類の薬剤が腎障害に伴う鉄利用障害による貧血の治療に使われています。

投稿者:KUSUat 23:11 | 日記

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