<< 2023/05トップページ2023/07 >>
2023年6月14日

側頭動脈炎と後頭神経痛


側頭動脈炎とリウマチ性多発筋痛症は病理学的には巨細胞動脈炎と呼ばれる。いずれも高齢女性に多く激痛となることも多い。他の疾患を否定してからステロイドを使用し急激な改善をみれば凡そ診断確定出来ると考えている。程度は軽症のものがかなりあり本来の診断基準を満たさない不全型と思われる。側頭動脈炎は一側前頭から頭頂部にかけての痛みで浅側頭動脈に圧痛を認める。これまで浅側頭動脈と後頭動脈にも圧痛を認めた例を経験していてステロイド投与で改善した。後頭動脈は後頭神経と並走している。一方、後頭神経痛は頭痛の原因としてよく経験される。これは圧痛を確認し神経ブロックで改善すれば診断できる。最近、後頭部痛を訴え、圧痛を認めたため神経ブロックをした患者さんでブロックを行い、直ぐに頭痛が改善しない方があった。鎮痛薬を処方しても痛みは増強したため翌日再診し、やはり後頭神経部圧痛を認めた。これは後頭神経の圧痛でなく後頭動脈の圧痛の可能性があると考えなおした。浅側頭動脈の炎症を伴わない後頭動脈のみの炎症の可能性を考えた。後頭動脈炎という病名は存在しないが同部に起きた巨細胞動脈と診断してステロイド投与し改善をみた。疾患には不全型やバリエーションがある可能性を意識することは重要と思う。

投稿者:KUSUat 12:05 | 日記

2023年6月2日

神経学会 シンポジウム遠隔医療


遠隔医療(telemedecine)が作る未来 医療機関から遠隔であるため適切な診断治療に至らない場合、それに対処すべく遠隔医療が望まれます。たとえばTPA療法は診断治療に際して時間的制限があります。この時、遠隔の専門医と画像、データを共有し診断し治療を行うことができます。たとえば神経学的検査はどうしても現場でなければ出来ない項目がありますが専門医の指示により代行できるtelepresenter(海外では養成コースのある国もある)が育成できれば遠隔医療の信頼性を上げることが出来ます。また画像、動画の共有においてAIを応用することで時間短縮、精度向上を図ることができると考えています。パーキンソン病などで遠くから通院の場合、いろいろな制約があり頻繁に受診が出来ないことがあります。この場合ヴァーチャルリアリティ技術を利用して遠隔での診察を試行しましたが診療精度の低下は確認されませんでした。実際の通院と遠隔医療を組み合わせることで患者さんの負担を軽減できると思われます。画像の利用としては表情、音声は認知機能やパーキンソン病の病状と関連することが分かってきました。AIを利用してアルツハイマー病、パーキンソン病の評価にも使えると思います。眼科領域では広範囲眼底カメラでとらえた画像をAIに学習させ眼底病変の診断に使うことが出来ます。遠隔地から画像を送ってAIに解読させることが出来るのです。データを重ねて精度の向上が図られています。また医療ではありませんが病院に受診する前にアバターを使ってモニター上で病院内を見ておいて実際の診療の際スムーズに動くことが出来ます。

投稿者:KUSUat 17:23 | お知らせ

2023年6月1日

脳神経外科コングレス (2)脳卒中後てんかん


脳卒中後てんかんについて  通常のてんかんは発作が2回以上でないと診断しない原則がありますが脳卒中後てんかんでは1回でてんかんと定義することが出来ます。頻度は脳梗塞で3〜5%脳出血、クモ膜下出血で5〜10%と言われています。最近は治療の進歩により若干低下傾向にあります。脳卒中の発症数は年間20万件でてんかん新規発症は8000〜15000件と考えられます。初回発作は1週間内のものをearly seizureといい直接的な障害よるもので多くは一過性ですが3〜4割が持続するものになります。1週間以後はlate seizureで皮質の瘢痕化が焦点となり7割が再発する経過をたどります。危険因子の評価で脳出血late seizureに使われるCAVEスコアでは3点で4割4点で6割がてんかんに至ります。脳梗塞ではSeLECTスコアを使い4点までは0ですが5点以上から8点9点になると6割に達します。脳卒中後てんかんを継時的にみると3年間の経過観察で正比例的に上昇しておりピークが確認されませんでした。1年で1.9%で3年で5.9%でした。発症低下因子としてはARB、スタチン、DPP-4阻害薬が上げられます。出血性病変では脳表にヘモジデリン沈着があると48.9%に発作が出現し鉄イオンの関与が考えられています。予防的抗てんかん薬の投与は高齢者や皮質下出血で重要度が上がります。発作があった場合は永続的な使用が必要です。症候性部分てんかんではfirst choiceとしてシナプス後膜でグルタミン酸をブロックするベランパネルも考えられます。

投稿者:KUSUat 09:53 | お知らせ

<< 2023/05トップページ2023/07 >>
▲このページのトップへ