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2017年10月29日

南加賀漢方研究会 谷川先生


日常診療に役立つ漢方 谷川醫院 谷川聖明先生 日本では漢方処方は(a)西洋医学的エビデンスがあるもののみ使う、(b)漢方を理解して使う、(c)よくわからず使うの三種類の使われ方がなされています。(a)では腹部手術後の腸管麻痺に大建中湯、胃もたれ食欲不振では六君子湯がよく知られています。六君子湯は上部消化管の働きをよくするグレリンの胃での分泌を高めます。インフルエンザでは麻黄湯が使われます。(b)では漢方的診方で処方を決めていきます。たとえば陰陽の違いで選択します。消化器では六君子湯は陰証、半夏瀉心湯は陽証です。フレイル(脆弱性)への対処は漢方の効果が期待される領域です。これは脾を補うということでアンチエイジングに通ずるのです。人参の入ったもので補中益気湯(全身倦怠)、六君子湯(食用不振)、人参養栄湯(全身倦怠、虚弱)、加味帰脾湯(抑うつ気分)が使われます。アンチエイジングのために腎を補うこともあります。かすみ目、頻尿、排尿困難、下肢のしびれ、腰痛、下肢痛では八味地黄丸、牛車腎気丸が有効です。認知症での幻覚、興奮、攻撃性、焦燥感、異常行動、被刺激性、睡眠障害に抑肝散は効果しADLを有意に改善し、認知機能への影響は認めません。小児の特徴は水毒(嘔吐、下痢、鼻気道粘膜の分泌過多、浮腫傾向)が起こりやすく五苓散が応用範囲が広い。また小児は陽証が多く急性期、気道疾患で麻黄剤(麻黄湯、葛根湯、小青竜湯、麻杏甘石湯)の適応が多い。亜急性期から慢性期では柴胡剤が使われる。

投稿者:KUSUat 20:26 | 日記

2017年10月13日

不全型とバリエイション


病気と健康は対極であるが実際には単純に白黒と判断されるものではない。その程度は両者の間で切れ目のない割合で移行していると考えるのが自然である。病気の診断ではこのことが大きく影響する。いわゆる不全型やバリエイションが珍しいことでは決してなく、むしろ多いと考えたほうが日常的であるといえる。特に市井の医療機関は病気の初期を診る頻度が高いためもあり尚更である。医療界では病気は進行すると診断しやすくなるため「後から診る医者ほど名医」と言われることわざがあるため、前医の悪口を言うお医者さんはあまりいない。不全型やバリエイションの診断は難しい。しかし診断が当たって上手く治療に結び付いた時は嬉しいものである。最近、側頭動脈炎と思われた例が2人あった。一例目は77歳の男性で右頭頂部痛。浅側頭動脈の圧痛は認めないが頭頂部の一部に触れると強い痛みを訴える。外見上は頭皮に異常は認めなかった。痛みはかなり痛いようであった。側頭動脈に圧痛の無い側頭動脈炎はあるのか迷ったが、動脈末梢に起きた動脈炎と考えてみてステロイド投与し急速な改善を得た。炎症反応(CRP)は±であった。二例目は79歳の女性で左後頚部から後頭部の痛み。左に強い両側後頭神経の圧痛、左浅側頭動脈の圧痛を認めた。左後頭神経の圧痛が最も強く、神経ブロックを行った。しかしブロックでは痛みは改善しなかった。左後頭動脈分枝に炎症の主座がある側頭動脈炎と考えステロイド投与し著明な改善を得た。後頭神経の圧痛の所見は実は後頭動脈の圧痛であったのであろう。ただし、これまでは診たことがない。いづれもヒントは顔をしかめるような痛みであった。

投稿者:KUSUat 18:59 | 日記

2017年10月1日

世界神経学会総会  京都


シンポジウム 多発性硬化症(MS)の治療 再発寛解をくりかえす多発性硬化症では以下の事象が予後不良の指標となる。多病巣で発症してくるものや早期に皮質病巣を併発するもの、ベースライン時の脳脊髄液および血清のニューロフィラメントライト(NfL)の存在、二回目の再発までの期間が短いこと、診断時に認知症状が認められること、男性で高齢、初発症状の回復が遅いことなどである。 治療効果の判定や病状追跡にはMRIが大変有用であるが治療薬変更6ケ月後とその後は年1回が妥当である。現在のMSの世界的データの蓄積で治療薬の有効性の比較および長期データに関する手がかりを得ることができる。また治療薬への反応性の予測因子の特定に役立つ。情報に基づいた治療決定を行う上で更なるエビデンスを得ることができる。

投稿者:KUSUat 17:33 | 日記

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