2019年2月17日
石川県認知症対応力向上研修
認知症諸症状の再考
加賀こころの病院認知症医療センター長和田有司先生
症状の成り立ちを再考することで日常診療介護に活かすことができると思います。
アルツハイマー病は妄想(物盗られ妄想が多い)や場所の認知障害が目立ちます。
レビー小体病では幻覚と妄想・誤認(嫉妬妄想)が多く症状は変動しやすい傾向があります。
アルツハイマー病の妄想の53例ででは75%に物盗られ妄想があり殆どが女性でした。被危害妄想は27%でこれも半数以上は女性でした。もの盗られ妄想が起こった時は先ずは同意共感する態度で話を聞き一緒に探します。また話すことは肯定的になるよう心掛けることや話題を変えるように持っていくのも良いと思われます。話を聞く機会を増やし不安感を軽減することが大切です。また興奮することがある場合ではリスペリドン、クエチアピン、ジプレキサなどの抗精神病薬を少量から使用することもあります。物取られ妄想は視覚性イメージの機能障害に基づく症状で頭頂葉(特に楔前部)が早期に障害されることと関連付けられます。
レビー小体病では物忘れよりも周辺症状が目立ちます。幻視ははっきりした像が見えます。しっかりしている時とぼうっとする時の差が激しく、パーキンソン症状を伴ってきます。うつやレム睡眠行動障害が見られることもあります。誤認妄想では幻の同居人や我が家ではない妄想、替え玉妄想があります。診断には心筋MIBG,DAT-SCAN,睡眠ポリグラフ検査が有用です。治療には非薬物療法としては心理的サポートや誘発物の除去、認知行動療法が有用です。薬物療法では先ず促進作用を持つ薬剤(抗コリン剤、抗パーキンソン病薬の一部)の中止が必要です。アセチルコリンエステラーゼ阻害薬は幻視にも有効です。その他ロゼレム、抑肝散、メマンチン、抗精神病薬が使われます。ただ薬剤過敏性を考慮しながらの使用が必要です。