2019年6月24日
専門医共通講習会 金沢
地域医療と医師会
石川県医師会理事 佐原博之先生
WHOの2000年の報告では日本は健康寿命は1位平等性は3位総合評価は1位でした。アメリカの医療は基本的に民間保険で行われ保険のグレードで受けられる医療が決まります。アメリカの医療はビジネスになっています。日本の国民皆保険制度は社会保障なのです。すべての国民が公的医療保険に加入し自由に医療機関を選ぶことができます。しかし小泉改革以降ミルトン・フリードマンが唱えた新自由主義・市場原理主義が発言権を得て様子が変わってきました。あらゆるものをお金で換算し、あらゆる面での民営化をめざし、市場での利益のために法や制度を変えるのです。規制改革は原理主義的におこなうと大きな障害や破綻をきたします。フリードマンと同世代で親交もあった経済学者の宇沢弘文は市場原理主義に対して社会的共通資本という考え方を出しています。それは特定の地域の人々が豊かな経済生活、優れた文化を展開し魅力ある社会を持続的、安定的に維持することを可能とする社会的装置です。そして、その様な社会的装置は市場原理や国家の統治とは別にその領域の事情をよく知っている職業的専門家集団が管理すべきであるとしています。医療株式会社の参入や混合診療の全面解禁は医療体制の崩壊の始まりとなるでしょう。専門家集団には高い学問的知見と倫理性が求められます。医療は国民の生命と健康を守る社会的共通資本であると認識する必要があります。