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2019年7月23日

教育講演 糖尿病腎症 (2)




透析まで行かせない糖尿病治療戦略 (2)
日本大学腎臓高血圧内分泌内科 阿部雅紀教授
腎保護について 腎臓糸球体の内圧は濾過圧を確保するため55mmHgと高目の設定になっています。これが糖尿病腎症となると70mmHgを越えるようになりタンパクの漏出が出現します。タンパクは尿細管で再吸収されますが、この時尿細管を傷害します。糸球体内圧を下げるには輸出細動脈を拡張すると良いのですがARB,ACE阻害薬にその作用があり透析導入を16〜20%減らすことが出来るとされています。また輸入細動脈からの圧を減少するには降圧、低タンパク食、SGLT2阻害薬が有用です。SGLT2阻害薬は尿細管細胞の保護作用があり顕性タンパク尿でも約半年で効果を見ることができます。ただSGLT2阻害薬は使用初期eGFRが一過性に下がるので念頭に置く必要があります。透析導入を15年遅らせるというデータがあり、これだと透析にならずに一生を終えることが出来る可能性があります。SGLT2阻害薬使用に際しての注意は開始後1〜2週間は脱水に注意し水補給が大切です。その他の薬剤の注意はサイアザイドはeGFRが45以上で使用するようにし、特に老人ではeGFRが下がり易くなります。血圧が高い場合はアムロジピン、ニフェジピンでしっかり下げることが重要です。ベニジピン、シルニジピンは輸出細動脈の拡張作用があり有用です。

投稿者:KUSUat 08:41 | 日記

2019年7月22日

教育講演 糖尿病腎症 (1)




透析まで行かせない糖尿病治療戦略 (1)
日本大学腎臓高血圧内分泌内科  阿部雅紀教授
新しい糖尿病治療薬DPP-4阻害薬テネリアは腎機能依存性がないという利点があります。またSGLT2阻害薬は他にない特徴を持っています。我国の糖尿病性腎症では現在透析患者の42.5%を占めるに至っております。糖尿病による心筋梗塞や脳卒中は低下傾向にあり、これにはスタチンも関与していると思われます。本来の腎由来(腎炎など)の透析患者より糖尿病腎症による透析導入が1990年代より上回り、更に増える傾向にありましたがARB,ACE阻害薬、DPP-4阻害薬の導入でフラットになってきました。そしてSGLT2阻害薬の出現で透析導入をある程度阻止できる可能性も見えてきました。ただ高血圧を伴う高齢化で腎硬化症による透析導入は増加傾向にあります。加えて糖尿病患者は血管障害リスクが高いと言えます。腎硬化症による透析導入は経過8年で平均75歳です。一方糖尿病では経過5年で平均67.5歳です。糖尿病ではeGFRが60を切ると進展速度が速くなります。eGFRは後期に急激に悪化します。腎障害を第2期の微量アルブミン尿の時期に見つければARBが効きやすいといえます。年に1回は尿中アルブミン定量をやっておきたいです。腎硬化症ではeGFRが30以上ではタンパク尿はありません。 

投稿者:KUSUat 09:56 | 日記

2019年7月8日

北陸パーキンソン病研究会 金沢




経頭蓋直流電気刺激 富山大学 山本真守先生
頭部前頭極を陽極、後頭極を陰極にして直流1mAで刺激することで運動機能改善、腰曲がりの改善を認めました。10回 約2週間行い効果は2ヶ月持続することが分かってきました。また繰り返し行うことが可能です。まだ研究段階ですが刺激装置は手軽なものなので在宅でも使えるようになるかも知れません。

パーキンソン病の最新治療 京都大学 高橋良輔教授
パーキンソン病の病理は神経細胞内に出現するレヴィー小体が特徴です。これはαーシヌクレインが単体から複合体、繊維形成と変化してつくられるものです。レヴィー小体は伝播しますが嗅球から始まるタイプ(嗅覚障害+)は伝播し易いといえます。また腸管から始まり迷走神経をたどり迷走神経背側核から黒質に達するタイプ(自律神経障害+)があります。これは消化性潰瘍に対して以前盛んに行われた迷走神経全切断術の患者にパーキンソン病になる方が少ないことより証拠付けることができます。
薬物療法ではL-DOPAが主役ですが長期にわたるとウエアリングオフ(効果の減衰)やジスキネジア(異常運動)が問題になります。ジスキネジアは400mg/日以下では出現しにくいと言われます。特に70歳以下の若年では300〜400mg/日以下の方がよいようです。ドパミンアゴニストは特に若い男性で衝動的行動(賭博、性欲亢進)が問題になります。病的買い物をきたし問題になる場合もあります。また突発性睡眠は日常生活に支障をきたし事故の危険を上げます。その点でMAO-B阻害剤は最初に使う薬としても考えられます。最後にiPS細胞からのドーパミン産生細胞の移植ですが、倫理的問題がES細胞に比べ少ないことや均質な細胞を得られること、自家移植では拒絶反応がないことが利点です。しかし実用化には費用や簡便性の点で細胞バンクをつくり利用できるようになる方向に進めることになるでしょう。現在、臨床応用に取り組んでいるところです。

投稿者:KUSUat 16:39 | 日記

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