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2020年12月27日

今年印象に残った疾患




今年印象に残った疾患 これは何んといっても現在進行形でもある新型コロナウイルス感染が筆頭になります。日常診察も常時マスクをするのでもどかしさがあります。院内対策として空気清浄機加湿器の整備、水道蛇口の自動化、順番予約表示システムの改良、手のアルコール消毒の自動化や常時換気、日に2回の院内接触部位のアルコール消毒と全面換気などを考えつくことを行ってきました。結果的には新型コロナウイルス感染のケースはありませんでした。外での活動も随分制約を受けました。前半では学会やセミナー、講演会が全て中止や延期になりました。後半それらはWebで開催され、距離的時間的に参加できなかった学会にも参加できたことは数少ない良かったことの一つです。臨場感は無いのですが自宅モニターで見る画面は見やすくオン デマンドで見えるのもあり便利でした。 次に印象に残ったのはクラウンド デンス症候群と石灰沈着性頚長筋腱炎です。この二つは病変部も近接し症状も似ているため一つとします。この診断はレントゲン写真や通常の頭部CTでは難しいといえます。CTでは第二頸椎(軸椎)がはいった画像が必要ですし、石灰化が骨の密度より少ないためWindow幅とWindowレベルを調整して石灰化像を見易くする必要があります。しかし症状を出さずとも同様所見を偶然見つけることもありました。激しい症状をきたさず気づかれないものも多くあるのだと思われます。 3つ目は特発性腕神経叢炎です。片側上肢の知覚障害や痛みと運動麻痺、筋委縮を呈する疾患です。これは頸椎疾患と間違えられることが多く、仮に頸椎レントゲン写真で何らかの所見があれば確定診断されてしまうこともあるかも知れません。早期にステロイドを使い治療開始することが大切です。11月下旬に診断治療開始した患者さんは現時点で運動麻痺は100%改善していますが知覚障害が1割程度残っておりステロイドを漸減継続中です。

投稿者:KUSUat 17:54 | 日記

2020年12月3日

脳卒中治療エクスパート ミーティング




超高齢化社会ニッポンの脳卒中・てんかん対策   杏林大学医学部 平野照之教授 80歳を越える超高齢者の脳卒中ではNVAF(非弁膜性心房細動)が原因のものが重要になります。塞栓の詰まる部位は内頸動脈32%中大脳動脈M1で50%M2が18%です。血栓回収術は早期に行わなければなりません。患者は搬入されると直ちにCT施行され出血か否かを確認後MRIが行われます。拡散強調画像で程度や広がりを確認MRAで閉塞血管を同定します。ただしこのメニューは情報を得るのに時間を要します。現在我々は造影CTだけで上記の情報を得る方法を取り入れています。造影範囲、CT血管造影、ペナンブラ(回復可能部分)の解析ができます。Canonのソフトを使っています。血栓回収術の適応は大きい脳動脈の閉塞で、障害領域が小さいものが対象とされます。CTのもう一つの利点は頭部検査に続いて全身CTも行われることで大動脈やアプローチ部位の情報が得られることです。以上の方法でこれまでと比べて搬入時から血栓回収までの時間が20分短くなり術成績の向上をもたらしています。ただし超高齢者は個人差が大きく病前状態の善し悪しが最終到達の状態に影響があり限界があります。高齢者では心房細動による心原性脳塞栓症が多く85歳以上でも事情が許せばDOACを使用するようにしています。 次に高齢者のてんかんですが原因比率で脳梗塞37%脳出血12%アルツハイマー病9%悪性新生物7%となっています。これまでは脳卒中後2週間以後で発作が2回以上のものを抗てんかん薬投与の対象としてきました。しかし最近は1回の発作でも10年以内に60%以上の確率で可能性のあるものは治療対象とする考えが出てきました。予測の目安としてCAVE score やSeLECT scoreが使われます。投薬はラコサミド、レベチラセタムが使われます。

投稿者:KUSUat 08:38 | 日記

2020年12月1日

リモート医療の落とし穴




リモート医療は離島や僻地での医療に大いに役立つ可能性があります。現在、新型コロナウイルス対策で接触時間や機会を減らす方法として一時的に使われています。普段診察を受けておられる方で変化の無い場合は支障は少ないと思われます。医療産業は人手のかかる産業で省力化、効率化が課題となっています。専門性の強い領域ですので医療内容を勘案しながら進めなければなりません。これまでリモート医療は産業界と政府により医療合理化の有力手段として導入の圧力がありました。それは初診よりリモート医療をするというものでした。確かに医師の偏在や患者の偏在を調整したり一人の医師で診る患者数を増やす手段となる可能性はあります。ただし全くの初診の患者をリモートで診察する勇気のある医師は殆どいないと思います。初診では簡単なそうに思える場合でも膨大な変数を処理していく過程があります。この場合に実際の患者がいないとできないことが多数あります。情況が安定している場合や緊急の際はリモート医療は医療の質を高め生産性を上げることができます。最近の経験で、普段診ている方より発熱があるがどうしたら良いかの電話がありました。娘さんが風邪にかかり、ついで自身が発熱したとのことでした。当然コロナのことを考えますが娘さんは他医で感冒の診断を受け改善していました。ただコロナは否定できていません。呼吸器症状や腹部症状、尿路症状の訴えはなかったのですが来院せず風邪薬(漢方)を出して経過を診ることにしました。しかし熱は一時下がったものの持続したのです。そこで総合病院内科に発熱有ということで紹介したのです。新型コロナウイルス抗原(-)インフルエンザ抗原(−)胸部CT(異常なし)尿中白血球(3+)尿中赤血球(3+)で腎盂炎のようでした。腎盂炎は高熱以外に他症状のない発熱では必ずチェックする病気です。コロナ禍が無ければ来院してもらって検尿で直ぐに診断できたはずでした。同居の娘さんが風邪をひいているという情報とコロナ禍で電話診療が可能という状況が作用したことは間違いがありません。

投稿者:KUSUat 09:19 | 日記

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