2023年4月16日
脳卒中学会シンポジウム
シンポジウム クラゾセンタン時代のSAHの治療
クモ膜下出血(SAH)は約7割が女性ですが近年は高齢化の進展で高齢者が増えています。SAH後4日から14日に起きてくる遅発性脳血管攣縮は脳主幹動脈の50%以上の狭小化をもって判定しています。症候性脳血管攣縮は予後不良因子です。末梢の動脈に関しては画像での判定が出来ませんが症状発現には末梢での攣縮が重要な役割をしていると思われます。薬剤による脳血管攣縮治療は1988年からオザグレル1995年からファスジルが使えるようになっています。今回再評価の試みをしましたが決定的な効果とは言い難いという評価でした。エンドセリンは日本での研究で見つけられた物質で強力かつ持続的な血管収縮物質で血管内皮細胞で産生されクモ膜下出血後に上昇します。今回取り上げた脳血管攣縮治療薬クラゾセンタンはエンドセリンA受容体に対する選択的阻害薬です。クラゾセンタンは昨年から使用可能となりました。恐らく微小循環障害に効果があると考えられます。使用非使用を比べ明らかな効果を示しましたがクラゾセンタンは水分を体内に保持する作用が強く、従来のように多めの補液や標準的補液でも胸水、腹水、肺水腫を生ずることがあります。胸水、肺水腫は20%の患者で遭遇しております。そのため全身管理にはかなりの労力が必要です。補液は絞って0〜500ml/日に減らすこともありますし、これまでは禁忌と考えられていた利尿薬フロセミドを使用し危機を脱することもあります。クラゾセンタンアは遅発性の虚血症状や脳梗塞を有意に減らしmRSが0〜2の割合が8割という効果を示しています。