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2023年3月8日

内科学会教育講演 腎疾患とSGLT2阻害薬


腎疾患におけるSGLT2阻害薬について 金沢大学感染制御部 腎臓内科 岩田恭宜教授 慢性腎不全によって透析に至る患者は毎年4万人を越える。慢性腎臓病(CKD)は8人に1人、1300万人が罹患していると想定されている。透析患者では糖尿病性が多いが最近は腎硬化性や不明のものが増えている。SGLT2によりブドウ糖は90%が再吸収されるが糖尿病では過剰に発現している。それを抑制するSGLT2阻害薬を2型糖尿病患者に使用すると腎イベントが約40%減少する。機序としては血行動態や抗炎症作用等が考えられている。SGLT2阻害薬使用すると腎機能は少し低下するが短期で回復してきて長期的には機能低下を遅らせるというう経過をとる。また低下時も高カリウム血症は起こしにくい。軽症CKD,尿アルブミン陽性に対して効果が高い。またステージ4CKDの保護作用もある。eGFRが30以下では効果が少ないがタンパク尿に対してはeGFRにかかわらず保護作用が期待できる。レニンアンギオテンシン系薬剤は輸出細動脈に働き、SGLT2阻害薬は輸入細動脈に働き腎糸球体内圧を下げるとされる。SGLT2阻害薬はアルドステロン拮抗薬併用で効果が高まる。また間接的作用も指摘されている。尿酸を0.8mg/dl下げ痛風発作や高尿酸血症による腎機能低下を防ぐ。また糖尿病での貧血を予防する。更に4〜5mmHg血圧を下げる。非アルコール性脂肪肝炎を改善するなどの作用もあります。

投稿者:KUSUat 17:32 | お知らせ

2023年3月6日

内科学会北陸地方会


内科学会北陸地方会 興味のあった演題をまとめてみます。 縫合閉鎖された電動ノコギリによる創部より全身性破傷風に 11日目より開口障害を自覚し14日目の診察では頸部と四肢の筋緊張亢進を認め破傷風を疑われた。集中管理下にテタノブリン、破傷風トキソイド、ペニシリンG1800万単位/日開始した。創部は解放し嫌気性状態を解除した。20日目より呼吸困難になり人工呼吸器管理とした。人工呼吸器は20日間使用し離脱できた。縫合された閉鎖創を伴う開口障害では積極的に破傷風を疑い早期から治療を開始すべきである。また受傷日の時点で破傷風トキソイドを打っておくことが良いと思われる。 ウエルニッケ脳症(W)とMarchiafava-Bignami病(MB)の症例 ウエルニッケ脳症は大量飲酒、炭水化物のみの食事、ビタミンB群の入らないブドウ糖の点滴の継続などで起きるビタミンB1欠乏により引き起こされる。意識障害や眼球運動障害、記銘力障害が出現する。MBはイタリアにおいて赤ワインを大量に飲む人に生ずる神経疾患で日本でも焼酎を多飲する人で見られるという。意識障害や失行が見られビタミンB1欠乏や葉酸の不足が関与している可能性が言われている。MBは画像検査で脳梁の脱髄病変を確認することで診断される。WとMBは合併することがあり、どちらもビタミンB1がかかわっていることになる。また大量飲酒は橋中心髄鞘崩壊をきたす原因でもある。橋中心髄鞘崩壊は低ナトリウム血症を急速に補正する際にも生ずるので注意が必要です。  βブロッカー点眼薬による洞不全症候群  緑内障治療にβブロッカー点眼液が使用されるが恐らく鼻涙管を通じて鼻腔内へ薬剤が流れ吸収され洞不全症候群が生じたと考えられた。著明な徐脈の場合緑内障ではアトロピンは原則禁忌なのでシロスタゾールを使用して対処した。高度徐脈では一時的ペースメーカー使用も考慮すべきと思われた。

投稿者:KUSUat 14:43 | 日記

2023年3月5日

生涯教育講演 内科学会 SGLT2阻害薬


心不全標準治療薬の革新(SGLT2阻害薬)金沢市立病院循環器内科 村井久純先生 人口は減少傾向だが高齢人口は増えており心不全患者数も増えている。急性心不全は対応が改善しているが慢性心不全は治療が十分でない。ARNI(angiotensin receptor neprilysin inhibitor)の出現により心不全の治療が進化していますが更に糖尿病の治療薬として新たに登場してきたSGLT2阻害薬が心不全腎不全にも効果があるということで注目されています。慢性心不全の70%に慢性腎障害がありSGLT2阻害薬の使用20ヶ月頃より心腎ともにコントロールと比べ予後が改善してきます。機序は利尿作用や血圧降下作用が考えられますが、既に利尿剤降圧薬が使用されているのですから他の機序も考えなければなりません。SGLT2阻害薬は交感神経抑制効果を持ち他薬剤にはない中枢神経系においても抑制効果を発揮することが特徴です。βブロッカーは末梢レベルで作用し中枢神経系には影響しません。交感神経活動を筋交感神経活動測定(MSNA)で評価するとSGLT2阻害薬の交感神経活動抑制効果は心不全例で顕著でした。また静脈還流圧の上昇を抑制し過剰な容量負荷を抑えます。また他の薬剤では予後は改善するものの運動耐容能は改善しないのですが、この薬では改善作用を期待できるため生活の質の向上が考えられます。

投稿者:KUSUat 23:09 | 日記

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