2015年7月24日
学術講演 抗血小板薬、抗凝固薬
抗血小板薬、抗凝固薬の有用性と使用法
三重大学医学部 西川政勝教授
アテローム血栓症の予防には高血圧治療、糖尿病治療、スタチンの使用、禁煙そして抗血小板薬が有用である。現在4種類使用されている。
アスピリンは二次予防にのみ効果がある。
クロピドグレルは効果発現の低い人たちがあることが問題になっている。これは肝臓での代謝酵素が関与していることが言われている。
プラスグレルは2時間で効果が出てくるといわれる。抗血小板薬の使いすぎは大出血にはすぐにはつながらない。
抗凝固薬使用中の患者にに抗血小板薬1剤加えた場合と2剤加えた場合では2剤の方が2倍の出血率を呈した。
歯科治療では1〜2時間前のNOACは中止したほうがよい。
抗潰瘍薬のネキシウムは代謝酵素が関連しないため、クロビドグレル使用時などでは使われることが多くなっている。
休薬により再発リスクが高くなるのは抗血小板薬では冠動脈ステント、脳血管血行再建術、主幹動脈50%以上の狭窄の場合である。
抗凝固薬では心原性脳梗塞の既往、弁膜症、心房細動、僧帽弁の機械弁の場合である。
夏のスポーツについて
夏のスポーツについて
夏は海や山そしてスポーツと暑い中で体を動かす機会が多い。このため熱中症には十分な注意が必要である。太陽光や高気温、高湿度など外的条件に加えて運動による内部からの熱により体温が上昇する。それに対して体は発汗し体温を下げようとするが、高湿度、無風、服装などで熱の発散がうまくいかない。発汗により脱水と電解質異常も伴ってくる。以上のような条件の中で脳視床下部の自律神経中枢の機能低下を来すと臓器の循環が悪化し生命にかかわることもある。予防にはそのようなことがあることを念頭において対策行動することにつきる。
そして夏のスポーツにはよく知られていないもう一つの危険性がある。それは脱水状態における筋肉の過酷使用による筋崩壊である。
クラッシュシンドロームは外傷などによる筋肉挫滅による筋崩壊で、筋肉の構成タンパクであるミオグロビンが血中に入りこれが腎臓を通って体外に出されようとするときに腎臓を損傷し腎不全をきたす。同様のことが過酷な筋肉使用で起きるのである。
腎機能は高齢になるに従って低下するが、脱水によって更に悪化する。それにミオグロビンによる腎損傷が重なると元に戻らなくなる恐れがある。特に高齢者による夏登山での長距離や高度差のある山歩きには注意が必要である。
今回自験例として私の二日間の白山登山(砂防新道で登り新釈迦道で下りる中級コース)で観測してみた。水分は普通に摂ったつもりであったが体重は3kg減少した。二日目の尿は9時間無尿で9時間後の尿量は少量で色は茶色がかっていてミオグロビン尿であったかもしれない。
下山翌日朝の尿はケトン体とウロビリノーゲンが(+)であり比重は1030と高かった。血液検査では普段正常なGOT,GPTが118,54と上昇していた。そして筋肉内にあり血中にはいつも200程度であるCKが5200と26倍になっていた。幸いにも腎機能を表すクレアチニンは上昇していなかった。
登山後三日間は下肢の筋肉痛で階段の昇降がつらい状態であった。下山後二日目の尿はケトン体ウロビリノーゲンは消失していたが比重は1030で脱水の改善は十分でなかった。
以上が今回の観測結果でこれからの参考にしたい。