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2017年12月26日

教育講演 慢性便秘


慢性便秘症 東北大学 福土 審教授 便秘とは大便を十分量かつ快適に排便出来ない状態をいいます。頻度の高いものとしては過敏性腸症候群(IBS)と機能性便秘(FC)があります。またオピオイド誘発性便秘つまり麻薬性腸症候群があります。IBSは約8%にあり腹痛を伴いますが日本では腹痛があまり重視されてきませんでした。FCではいきむことが多く硬便で残便感や肛門閉塞感が強く摘便や圧迫が必要な時があります。便秘を調べていくには先ずオピオイドや抗うつ薬等の薬物使用をチェックします。なければ症候性のものを検討します。それもなければ癌などによる大腸、肛門の閉塞性疾患つまり器質性便秘を疑います。それもなければ重度の消化管運動異常症を考えていきます。IBSでの便秘は心血管障害死のリスクや脳卒中の頻度を上げます。腸内細菌産物と動脈硬化は関連があり西洋食で起きやすいとされています。IBSでは高分子重合体や食物線維、ラクツロース、ピコスルファートなどを治療に使います。酸化マグネシウムも使われますが高齢者やe-GFRが30以下では血中マグネシウムイオンが上がり悪影響が出るため減量、中止が必要になります。最近使用できるようになったルピプルストンはIBS, FCどちらにも有効です。これは粘液分泌作用、腸粘膜バリア修復作用があり腎不全にも腎の負担を減らし効果があります。よく使われてきたアントラキノンは慢性便秘では大腸機能が乱れる原因になり他剤に入れ替えていく必要があります。またIBSではオリゴ糖は使用してはいけません。

投稿者:KUSUat 23:44 | 日記

2017年12月13日

インフルエンザ研修会


季節性インフルエンザ対策 岩城内科医院 岩城紀男先生 現在使われている抗インフルエンザ薬はノイラミニダーゼ阻害薬で4種類あります。タミフルが最初に出た薬で当初、脳症との関連が言われ現在も10〜19歳では使用できません。4種類の使用と非使用で比較して両者に差はなかったので薬剤によって脳症が起きているわけではないと思われます。インフルエンザ罹患した6〜9%に脳症きたす事実があるので、また特に小児はなりやすいので罹患した本人や家族に前もって伝えておくことが大切です。具体的には2日または3日までは飛び降りたり飛び出したり出来ない条件下に置くことが大事です。リレンザは5日間にわたり日に2回吸入するのが煩雑で、1回の吸入ですむイナビルの使用が増えています。ラピアクタは1回の点滴で老人には確実に投与でき効果的です。全体としてはタミフルの使用が多いと言えます。現在、作用機序の違う薬剤(Capエンドヌクレアーゼ阻害薬)が開発中で効果が期待されます。ワクチンの効果に関してはA型インフルエンザは変異が早く流行も変わりやすく準備するタイプの決定が難しいこともあり効果的なこともあり無効のこともあるというのが現状です。B型は比較的一致するようです。インフルエンザ罹患を引き金に肺炎球菌による肺炎を合併することがあります。ワクチンには23価のニューモバックスと13価のプレベナー13があります。前者が有効期間が5年ですが多タイプの肺炎球菌に対応できます。後者は免疫記憶が期待でき長期間効果があります。前者を接種してから後者を接種するには1年以上あける必要があります。逆に後者を先にした場合は6〜12ケ月間をあけて前者を接種します。

投稿者:KUSUat 08:02 | 日記

2017年12月7日

日常診察での不思議なこと


日常診療をしていると奇妙なことに気付くことがある。それは本来頻繁には出会わない疾患に何度も遭遇してしまうことがあるのです。以前、勤務医であった時、頭部打撲による小脳内血腫の患者を数週間の間に何人も手術したことがあった。小脳の容積は脳全体の1/10以下で構造的にも脳挫傷をきたしにくいはずです。小脳出血が起きる条件は後頭部の極めて強い打撲です。その際はレントゲン写真で後頭骨に縦に骨折線を認めることが多いのです。単純に確率的に考えるとあり得ないこともあるということで、これは物事の発生のゆらぎから起きることなのでしょうか。最近の奇妙なことはパーキンソン病の患者がよく見つかってくることです。この原因として(1)検査法が進化したことによる(2)高齢化で患者の数がふえた(3)潜在的患者はかなり多いなどが考えられる。(1)でRI(ダットスキャン)検査ができるようになったことが大きい。(2)では脳内のドーパミンは加齢と共に低下していくので超高齢層ではかなり頻度が高くなるのではないか。(3)では、これまで老人の転倒はロコモティブシンドローム、フレイル、運動不足などに原因を求めていたが実はパーキンソン病の病態が関与しているのではないか。パーキンソン病を疑い検査してみる必要がある。通常使える検査としてダットスキャンが開発されたが、感度と特異度が高ければ試す価値があるということになる。擬陽性が多いとすると検査に騙されていることになるのでいづれにせよ実際の診療では一人一人よく経過を追う必要があると思われる。

投稿者:KUSUat 19:44 | 日記

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