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2012年3月29日

映画「本陣殺人事件」

ATG製作の横溝正史の「本陣殺人事件」を観ました。
ATGの「本陣殺人事件」は1975年の映画で、
中尾彬が金田一耕助を演じています。
監督は高林陽一です。

2011年7月16日に第36回例会を開催しました。
参加者は10名でした。
見終わった後一人一人簡単に感想をお聞きしました。
◆こんなファッションの金田一なんだと思った。
トリックを映像で見るとわかりやすかった。
琴爪で指紋が残っていてすぐわかるだろう。
切った手で何をしたのか?(←指紋を残した)
◆わかってからひっぱるひっぱる。
解決してから30分ほど続く。
◆原作を2年前に読んだが、全く覚えていなかった。
犯人もトリックも。原作に忠実なんですね。
◆スマートな金田一だった。
三郎が背中を切ったのをどうやったのか、
何度読んでもわからない。指紋でばれそう。
横溝正史で機械密室物はこれくらいだと思う。
面白いし珍しい。映画ひっぱりすぎ。
◆懐かしい感じ。金田一は石坂、古谷のイメージがあった。
それらは生首が飛び出すなどビックリさせる演出だったが、
「本陣」はおとなしめだった。すーちゃんの顔が一番恐かった。
◆角川映画のイメージが強く、作り方が違う。
原作を読んでいまいちトリックがわからなかったが、
映像で見るとわかった。ただむずかしくて、
ちょっと何かがうまくいかないとうまくいかないトリックだと思った。
三郎が喜々として手伝っているのが不自然。
小説から省略されているからか。
◆原作、視覚的に見るとよくわかった。
やはりすーちゃんが恐かった。
三郎の本棚が原作を読んで期待して見たが、普通の本棚だった。
◆はじめて見た。中尾彬が若い。
小説は時間の制約がないが、映画は時間の制約があるので、省略されているのはしかたない。
映像の宿命。映画としてがんばっていた。
スタッフが原作に惚れて作ったという感じ。
◆原作は長編というより長めの中編なので、よく引き延ば
せたと思う。
ドラマ化したら1時間くらいになりそう。
機械的トリックは映像化すると面白い。
映画であまり「殺人事件」というのはないので「本陣殺人事件」というタイトルが映画らしくない。
「三本指の男」の方が映画らしいタイトルだ。
◆昔劇場で観た時、入場するとちょうどトリック解明部分でビックリした。
機械トリックは映像で見ると面白い。
『斜め屋敷の犯罪』も映画化してほしい。(←CGになりそう)

投稿者:keita2at 07:08 | お知らせ | コメント(0) | トラックバック(0)

2012年3月26日

毒入りチョコレート事件

アントニー・バークリーの『毒入りチョコレート事件』は
多重推理物の先駆的なミステリです。
6月18日に金沢ミステリ倶楽部の第35回例会報告を開催し、
『毒入りチョコレート事件』を合評しました。
参加者は11名+見学2名+中学生1名。

◆34年ほど前に購入して読んだが、内容を忘れていて再読した。
わかりづらい。読みづらい。最初の100ページ難航した。
バークリーは昔『毒チョコ』くらいしか訳されていなくて、それを読んで「つまらない作家」だと思っていた。
しかし最近バタバタ翻訳され、見直されてきた。『絹靴下殺人事件』はシェリンガムが活躍するミステリで、CSIのドラマにしてもいいくらいストーリー展開も速い。
バークリーは面白いと思った。
『毒チョコ』の6人6通りの解決というのは、必ずこれという真相ではないので、面白い。
◆最初なかなか入っていけなかった。
推理に入るといろんな展開があり、楽しめた。
イギリスは紳士淑女だが、意外な裏が暴かれていくのに惹きつけられた。
6人の推理を表にしないとと思ったら、最後に表が出てきた。
ラストの予想はついたが、グレーな部分を残して終ったのが良かった。
◆外国の翻訳物をあまり読まないので、頭に入らなかった。
1人1人の推理が面白く、まさかの結末だった。
もう何年かしてもう1回読みたい。バークリーの違う作品も読んでみたい。
◆外国人の名前が難しい。ダマーズがかっこいいと思った。
いつの時代でも「男はしょうもない、女はこわい」と感じた。
◆「偶然は裁く」を先に読んでいた。その短編の解答のままで良いと思う。
昔『金田一さん、あなたの推理は間違いだらけ』というあら探しの本がヒットしたが、視点を変えるとこんな解答、あんな解答が出てくるというのが面白いと思った。
しかしやはり短編の方がすっきりする、と思う。
しかし『毒チョコ』のラストがさえないおじさんがみんなをギャフンと言わせるのが面白い。(←コロンボに通じる)
◆1回目読んだ時はそんなに真新しいとは思わなかった。
『ジャンピングジェニー』を読んで、シェリンガムのあまりにも探偵らしくない行動に、どうかしてると思った。
その後『毒チョコ』の2回目を読むと、やはりシェリンガム、へんだと思った。
実在の犯罪事件を取り入れているので、細かい注釈があったらいいと思った。
◆ミステリを書く時、解決を決めて、手掛かりを用意して、どう論理展開させ、説得力を持たせるかと考えるが、
『毒チョコ』はあまり説得力がなかった。
そのわりにまわりがそうだと納得するのが笑えた。ブラッドレーが自分を犯人と推理するのも面白かった。
最初に手掛かりがかいてあれば良かった。
(当時のミステリは後から手掛かりを書く。それが特にクイーン以降フェアに書くようになった)
◆外国人の人物がわからない。息抜きしないと読めなかった。
探偵が「これだけ楽しませてくれた犯人に乾杯」と言うが、頭おかしいと思った。
登場人物達が何か言われるとすぐカチンと来るので、心が狭い、人間的に小さいと思った。
実際の犯罪事件の犯人に喩えた文が出てくるがわからなかった。
◆新しい手掛かりが次々出てくる。『聯愁殺』(西澤保彦)もそんな感じだが、最後は違った。
◆バークリーは初めて読んだが、複雑ですぐついていけなかった。
犯罪研究会の人が自分が犯人だという推理が面白かった。
犯人はどうなったのかと思った。
◆ロジャーの立ち位置がわからない。手掛かりが少ない。
スピーチ口調で書かれているのでわかりにくい。
結局犯人は誰か、謎とは何なのかを書いている。
◆特定のクラブを作って所属するのは外国でよくある。
メンバーを互いに批判しながらいる。(金沢ミステリ倶楽部は…)こういう終わり方は余韻があって、1930〜40年代当時いくつかの作品にも見られる。
◆『ピカデリーの殺人』でチタウィックが解決してと書かれているので、ブランドなどの別解答は書かれているが、この結末がバークリーの意図した結末。
『第二の銃声』にダマースの名前が出てきて、ブラッドレーは登場する。
『毒チョコ』だけ読むと、シェリンガムのことがよくわからないが、他の作品を読めばシェリンガムはバークリーの作った名探偵ならぬ迷探偵であることがわかる。
それまでのミステリでは神のごとき名探偵が手かがりを元に事件を解決するが、それが本当に唯一の正解なのか?ということから生まれた多重解決(推理)ミステリの先駆的な作品で最近のミステリ(たとえば古野まほろ)に対しての影響が大きい。
『毒入りチョコレート事件』はもしかしたらバークリーの最初に読むべきミステリではないかもしれません。
基本的に出版された順番に読むと、シェリンガムの名(迷)探偵ぶりと、バークリーの考え抜いたプロットのミステリを楽しめます。
バークリーは探偵小説を書きながら、その中で探偵小説の批判をしたと言えます。
『毒チョコ』以外の作品では、シェリンガムは自分の推理を仲間とディスカッションしながら(読者に包み隠さず)推理していくので、必然的に多重推理になってくるのだと思います。
是非他の作品も読んでみて下さい。
個人的には特に『ジャンピングジェニー』を。


投稿者:keita2at 22:49 | お知らせ | コメント(0) | トラックバック(0)

2012年3月23日

とむらい機関車

大阪圭吉さんは生誕百周年を迎えた本格探偵小説作家です。
その代表作である「とむらい機関車」を合評しました。
2011年5月21日に例会を開催し、参加者は12名でした。


作品自体が、初期の江戸川乱歩と同世代で、昭和10年の作品であり、当会も今回から新たに2名の若い会員のかたも増えて、正直担当者としては、読みにくい、古臭い、わかりにくい等の声も多く聞かれるのではと懸念していたのですが、現代表記に改めてあったこともあり、意外と読みやすかったという反応が多かったように思いました。
作品としては、戦前本格作品ですが、現在の新本格物とは違い、話し言葉主体の作品ではなく、いわゆる説明文が多いのが特徴の作品です。
以下皆さんのご意見を書かせていただきます。(ネタばれもあ
りますが、御了承ください)
◆初めて読む作家の作品。何故、機関車に轢かせて豚を殺すのかという謎から始まって、最後の落ちが犯人の好きだった相手に出あうためという意外性があり、探偵役の戸山助役の謎ときの過程も面白かった。
◆大阪圭吉という名前から大阪弁でかいてあるのかと思った(笑)。内容は読みやすかった。キャラクターも無理が無くわかりやすいので、話の展開も無理がなかった。作者が鉄道マニアということもあり、リアリテイーがあっていい。70年以上前の作品という古さは感じなかった。
◆しっかりした話の構成だった。構成としては、江戸川乱歩や、横溝正史の「鬼火」にあるような、実はこんな話があって、不思議な殺人の死体がでて、ある程度条件をふっておいて、それは実はこうだったというオーソドックスな構成だが、楽しく読めた。
◆作品は古いが、現代表記でるびもふってあり読みやすい。謎の提示も、死体の描写(機関車に轢かれた豚や、人間の死体の描写など)もしっかりかかれていた。
奥の障子から覗く犯人役の女性が、エロチックだと表現しておきながら、陰気な親子だとも書いてあり矛盾した表現になっていたのが気になった。
◆読んでいて、懐かしさを感じた。これがCSIだったら、死体の破片ひとつひとつを拾いあげて、死体現場に番号札をおいて調べるだろうが、そんな時代と違う古きよき時代の
ミステリーというものを感じた。
◆漢字が難しかった(みもちおんな=妊婦)。作
者が電車好きなのがよくわかった作品。金田一耕助の作品のような情景が浮かぶ作品(実際もほぼ近い年代の作品です)。読みやすかった。
◆70年以上前の作品というが、そんな古いものとは
思わなかった。残酷なバラバラ死体や肉片のシーンは怖かった。豚を殺して最後は人へ、犯人の母親も殺してしまうのではと想像して怖い気がした。親子の関係や描写もよく書かれていた。また、他の作品も読んでみたい。
◆この作品については、久しぶりに読ませてもらった。本格ものとして、犯罪の証拠となる花屋のことや、豚を殺した動機など伏線も張られていていい作品。ただ、葬儀の習慣など、昭和初期の風俗や、風習を知らないとできない作品。
犯人の犯行動機のひとつとなった象皮病については、専門的な立場からいわせていただくと、伝染病ではないが予防策を当時の政府はなにもしておらず、犯人の娘のようなある意味不幸な被害者が多かった時代だというのがよくわかった。
◆作者は列車が好きで、列車の描写が好きという印象を受けた作品。豚の死体描写は難しく、起承転結がむずかしかった。
◆江戸川乱歩以前の作家ということで、名前だけは知っていて、作品ははじめて読んだ。豚をどうやったらつないでおけるのかとか、何故、豚を殺さないといけないのか、何故豚でないといけないのか、ホワイダニットのミステリだが、今の新本格の作家なら登場人物の間でディスカッションが行われそう。最初黒豚で次白豚というのに何か意味があるのかと思ってしまった。動機が都市伝説となっている。
◆動機が悲しさをそそる作品。都筑道夫さんによればホワイダニットがモダンミステリだが、「とむらい機関車」にはそれがある。ディスカッションこそはしていないが、「なぜか」をメインにしているのが良い。同じ動機の某ミステリを昔読
んで感動したが、それと同じだと思った。

(補足)何故殺したのが豚でなければならなかったか、豚を殺さないといけなかったのか、これについては、私の私見ですが、以下に述べさせていただきます。

まず豚を殺さないといけなかったのは、娘が恋こがれていた機関手の長田泉三氏を、豚が死んだ際に機関室に飾る葬儀用の花輪を買うために店に来させるためであり、娘に泉三氏をあわせるためであることは話のとおりだと思います。人を殺したのでは、足がつきやすいですし、警察の取り調べもあり、あとがやっかいです。動物の故殺なら昔も今も法律上は器物損壊罪程度ですみます。
それと、何故先に豚を殺して線路に放置しておかなかったか、それでは、事故死というより、最初から作為的に轢かせたとわかり、足がつきやすいとも考えたからではないかと思います。
では、何故、犬や猫ではなく豚でないといけなかったのか、これは、私の想像ですが、ひとつには、犬や猫では、体が小さく、よく見かける通常道路で轢かれて死んで転がっているのとは違い、列車でバラバラにさてもよくわからないこと。
豚は、ある程度体も大きく、組織や肉は人間によく似ているとされ(CSIシリーズでも検視で、死体に傷をつける実験などで、吊るした豚の死体にナイフを指して傷口のできかたを見るシーンがでてきます。)実験に使われています。ですから、誤って轢き殺したのが、あたかも人間であったかのような罪悪感を、話の中で長田泉三氏は持ったのかもしれません。それに、雑食性の豚と違い犬や猫では、菓子でついてこないし、貧しい葬儀屋では、犬や猫に与える肉や魚を買う余裕もなかったのではとも考えられます。
それに、本作品のなかにもあるように、犯人の身近に養豚場が存在し、屠殺用の豚が多くいて、何匹か逃げても目立たなかった
ことも犯人が豚を犯行道具に選んだ動機だと私は思います。
犬や猫では、今も昔も室内で飼うペットですから行方不明になっただけで大騒ぎでしょうから(笑)。
以上は、私なりに推理してみた解答です。この時代の作品は兎角、何故このようなトリックが使われたのか、犯人や作者の意図がわからない作品も多く、本作品も、いまとなっては、天国におられる大阪先生にその真意をお聞きするしかないわけですが、今現在生きているものが、いろいろ想像してみるのもまた楽しいと思います。
それなりに全体の印象として、参加された皆さんには楽しんでいただけたようで、担当者としては安心した次第です。機会があれば、鮎川哲也ものや、「妖婦の宿」など犯人あてを紹介したいと個人的には思っております。(文責Y氏)

投稿者:keita2at 07:10 | お知らせ | コメント(0) | トラックバック(0)

2012年3月20日

金沢ミステリ倶楽部会誌vol.4発行

金沢ミステリ倶楽部も4年目に入り、
2012年3月に会誌vol.4が出ました。

 A5で作ってきた会誌を
今回はB5の二段組にしましたが、 
148ページというボリュームになりました。 
例会報告があり、
創作が12編、エッセイが8編が入っています。
 
来年度は4月21日が第一回例会です。
マニアの人から、初心者、東野圭吾好きな人など
メンバー募集中です。
現在メンバーは20代〜40代まで23名います。
ミステリが好きで、 50才未満の方どうぞ。

投稿者:keita2at 16:54 | お知らせ | コメント(0) | トラックバック(0)

2012年3月16日

冬の鬼

2011年4月23日道尾秀介さんの短編集『鬼の跫音』の中の「冬の鬼」を合評しました。
2011年度第一回目の例会でした。

道尾さんは2004年『背の眼』で第5回ホラーサスペンス大賞特別賞を受賞しデビュー、『向日葵の咲かない夏』が本格ミステリとして注目を浴び、文庫版が70万部を超えるベストセラーになりました。4度直木賞候補になり、2010年5回目の『月と蟹』で受賞しました。今回は2009年の短篇集『鬼の跫音』の中から「冬の鬼」を読んで皆さんの感想をお聞きしました。

・1月8日からスタートして、日が戻っているのでどんなストーリーかと思ったが、1月1日の日記がオチになっていた。時間があれば後から読んでみたい。
・日付に気付かずスラスラ読んだ。どんどやきに1人で行ったり、身体を洗ってやったりという場面が後でなるほどと思った。Sはストーカーっぽい。
・日付が逆になっていて、最後カーと来る。1月8日の鬼の跫音というのが、逃れられていない。ずっと聞きづける。ここまでしてくれる人がいるとは。『向日葵』読んだけど、全然意味わか
らなかった。
・結果がわかってから読み返すと、伏線が意外な意味を持ち、
違う意味になっている。1月9日以降どうなるのか。
・1月1日から読んでいくと1月8日はとてもこわい。聞きたくないこととは何か?後からわかるという仕組みが面白い。
・今読んでもわからない。途中から逆行していることに気付いた。『向日葵』止まっている。読みやすい文だと思った。
・達者で頭がいい作家。文が磨いて書いてあり、実力のある人だと思う。トラップが仕掛けられているが、(略)の箇所がフェアでない。1月8日は何?この先はおどろおどろしい悲劇に?乱歩になる?S殺して死骸と暮らす?
・初め読んで谷崎潤一郎かと思いながら、あれあれあれ。日付に気付かなかったが、後から読み返して気付いた。ここでは言えない漫画を思い出した。
・『告白』は自分勝手な主張がされていたと思ったが、これは私小説に不気味な粉を振ってホラー仕立てにしてみたという感じ。怪しい感覚を描くのが流行りなのか。人間を描いているか。
・跫音(あしおと)、鴉の漢字が何か意味があるのか。(跫は恐を連想させる?鴉も禍々しい感じ?)
・音が一番こわい
等々感想が話されましたが、ネタバレになるのでこれくらいで。ちなみに女性の一人称の日記なので女性の方々にいかがです
かとお聞きしたら、誰も好きではなかったけれど、上手だというご意見でした。最後に1月8日の日記の解釈に関していろいろな意見が出ました。その中でCさんの1月7日の記述から導いた一つの結論にかなり説得力があり、それでスッキリして散会となりました。
ちなみに担当はこれを読んでクリストファー・ノーラン監督の映画「メメント」を思い出しました。ストーリーを終わりから始まりへ、時系列を逆向きに映し出していき、意外な真実が暴き出されます。また夢野久作の「瓶詰地獄」も無人島からの手紙が時系列によりインパクトを与えるという点で思い出されました。
道尾さんのミステリは騙しのテクニックが見事で、『向日葵の咲かない夏』『シャドウ』『片耳の猿』『ラットマン』『カラスの親指』と是非読んで騙されていただきたいと思います。本格好きな方には怪奇現象もすべて論理的に解決される『骸の爪』がオススメです。


投稿者:keita2at 23:02 | お知らせ | コメント(1) | トラックバック(0)

2012年3月15日

ホームズとルパンを語る会

すっかり、更新さぼってましたが、金沢ミステリ?楽部は、現在進行形で活動中で、
もうすぐ会誌vol.4も完成予定です。
北陸三県、広くメンバーを募集中です。

さて2011年3月19日の例会報告を、って一年前ですが。
原点に返って
「ホームズとルパンについて語る会」ということで例会を開催しました。
担当のもつさんのその時の例会報告です。


 ホームズについては、最初に出会ったミステリだった、という方が四人。NHK等で放映されたドラマの印象も強いようで、三人の方が思い出を語ってくれました。作品としては「バスカビル家の犬」「踊る人形」などが評価が高かったようでした。さすが世界のドイル、うんちくも数多く披露され、特にホームズの特技、柔術(バリツ)については興味を持っている方が多かったようです。
 現代的な感覚でホームズものを読むと、本格としては少々物足りないといった感想もありました。これはすべてのミステリ古典に共通する難しさかもしれません。Anjueさんの小学生の息子さんがドイルを面白く読んでいるというお話や、Iさんが生徒に「ホームズの冒険」のカセットブックを生徒に聞かせたところ喜んでいた、というお話を聞くと、いや、ホームズも古典もまだまだ安泰と安心します。
 Cさんがホームズの大ファンであるとおっしゃって、「まだらのひも」の原題には、ふたつの意味(ひもとジプシーの一団)を持つ「band」が使われており、「ひも」という訳し方では半分ネタばれしてしまう、という、まさにシャーロキアンな知識を教えてくださったのには感動しました。また、最初に出会ったのがルパンでなくホームズだったそうで、おそらくどちらに先に出会うかということがどちら派になるかに影響を与える、というご意見には同感しました。

 ルパンについては、アニメ「ルパン三世」のイメージが断然強いようでした。ルブランが(勝手に)ホームズとルパンの対決を描き、なおかつルパンを有利にしている(「ルパン対ホームズ」)のはどうなんだ、というごもっともなご意見が。作品では「ルパンの冒険」「虎の牙」「813」が面白かったとあげられていましたが、全体的にルブランを読んでいる方は少ないようでした。

 進行は、「少しホームズ・ルパンを知っている」→「かなりファン」→「まったく初心者」の順で話し、最後に「まったくの初心者」としてKさんに感想をまとめていただきました。「今度読んでみようと思った」とおっしゃってくださいましたが、あの状況でそれ以外の意見はなかなかいえないですよね(笑)、予定調和を押しつけて申し訳ありませんでした。(個人的には読んでも読まなくても、どっちでもいいと思います。)

 どうしてルパンがフランスであれほど人気を博したか、というHさんに、「(イギリスとフランスの対決という)時代背景ではないか」と薄っぺらい意見を言いましたが、更にフランスの国民性もあるのではないかとも思いました。フランス文学というと、サガンやカミュといったアンニュイな印象がありますが、もう一方でデュマやヴェルヌなどの大冒険小説の流れもあります。冒険大好きなフランス人が、ホームズが発表され、そのおもしろさに気がつかなかったはずがないと思います。夢中になって(もしかしたら隠れて?)読みながらも、それが憎っきイギリスのものだというジレンマ。それを解消したのがルパンではないかと思います。ルパンはミステリというだけでなく、冒険小説としての文脈でも語られるべきかもしれません。・・・こっちの意見も浅かったですね(笑)。すみません。


投稿者:keita2at 06:58 | お知らせ | コメント(0) | トラックバック(0)

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