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2016年1月19日

講演会 利尿薬の使い方 (2)




福井大学教授 岩野正之先生
ループ系利尿剤はNa,K,Caを低下させ、糖代謝異常を起こすことがあります。
Naは130を切ると生命予後に関連してくるので注意が必要です。
トルバプタンは水利尿薬(水が抜ける)で腎のアクアポリン-2に働きます。
末期腎不全で使用して尿量は増えますがNa、クレアチニンは不変です。
SIADH(不適切ADH分泌症候群)においてもトルバプタンが有効です。
心不全での低ナトリウム血症にも使えます。
低ナトリウム血症の場合急激なナトリウム値の補正は浸透圧性脱髄症候群(中心橋脱髄症がよく知られている)を引き起こすことがあるので慎重に行う必要があります。

投稿者:KUSUat 12:18 | 日記

2016年1月17日

講演会 利尿薬の使い方 (1)




福井大学教授 岩野正之先生
腎臓は水とナトリウムのバランスをとる臓器です。
水を体に蓄える作用についてはアルドステロンと抗利尿ホルモン(バゾプレッシン)が関係しています。
前者はナトリウムの腎臓での再吸収をたかめ循環血液量を増大させます。後者は水を体内に保持しようとします。以上は頸動脈や心房にあるセンサーの信号で調節する容量調節系と視床下部にあるセンサーによる浸透圧調節系により本来調節されます。
しかし腎機能や心機能肝機能の異常で引き起こされるアンバランスに際してはそれぞれ対処しなければなりません。
分かりやすい状況把握には水とナトリウムの量を考慮することが重要です。水をY軸、ナトリウムをX軸にとると水が多ければ低ナトリウム血症、少なければ高ナトリウム血症です。ナトリウムが多ければ浮腫、少なければ脱水です。
最近使用できるようになったトルバプタンは水の再吸収を阻害します。この薬剤は水利尿の薬剤とすることができます。腎機能障害末期、心不全、肝不全の水貯留改善にこれまでにない効果を認めます。ループ系利尿薬は腎機能低下をきたすがトルバプタンでは認められません。

投稿者:KUSUat 22:41 | 日記

2016年1月5日

痺れの話 (4)




末梢神経の障害(2)
圧迫によって起きる障害では構造的、動態的原因で障害が引き起こされます。
脊髄に出入りする部分を神経根といいます。この部分は脊椎の変形や骨棘、椎間板のヘルニアにより圧迫を受けます。脊椎でこのような変化が起きやすいのは動きが大きく頻回な頸椎と重い上半身とそれに負荷された荷重を一手に支える腰椎です。片側で症状を出すこともありますが、両側のことも稀ではありません。両側の場合は他疾患と間違われることを認識しておく必要があります。
頸椎から出る神経根は腕神経叢(そう)をつくり上肢のそれぞれの末梢神経にわかれます。この部分では周囲の構造(前斜角筋、鎖骨、頸肋)に挟まれて末梢神経障害が出ることがあります。さらに末梢では手関節部での手根管(正中神経)尺骨管(尺骨神経)、肘部での肘根管(尺骨神経)が弱い部分になります。
下肢では腓骨神経が腓骨骨頭で圧迫されることが有りこの時は知覚障害がなく垂足が特徴的です。

投稿者:KUSUat 21:31 | 日記

2016年1月3日

五苓散で治癒した小児帽状腱膜下血腫




帽状腱膜は頭皮と頭蓋骨の骨膜の間にある強靱な膜で前は前頭筋、後方は後頭筋へとつながっている。
帽状腱膜下血腫はこの膜と骨膜の間に生ずる血腫で乳小児期の頭部外傷に伴って形成されることが多い。または吸引分娩の際の陰圧で生ずることがある。
頭蓋外に形成されるため神経系に影響を及ぼすことはない。しかし、体重に比較して大きいと貧血の原因になる。特に新生児では影響が大きい。ショックに陥ることもあるので注意が必要である。また安易に抜いて量をへらすと再貯留することがあり危険な状態に追い込んでしまう可能性があるので慎重でなければならない。
これまで治療は血腫が液状であれば注射器で抜いて圧迫包帯をすることもあったが、うまく圧迫できなかったりできても再貯留することがあった。
慢性硬膜下血腫の再発予防には五苓散が使用され良い結果が報告されている。帽状腱膜下血腫では桂枝ブク苓丸で治癒した報告がある。この両者に共通するものは桂皮とブク苓であるが、ここでは使い慣れた五苓散を使用してみた。
患児は1歳8ヶ月の女児で1週間前に50センチの高さの台からジャンプしてコンクリートの床で頭部を打撲した。4日目に洗髪の時右頭頂部のぶよぶよした腫れに気付いて受診された。CTで頭蓋内に異常は認めなかったが頭皮下に貯留するものを確認した。
帽状腱膜下血腫と診断し、五苓散2.0g/日(分3毎食前)をお湯で溶いてのませてもらった。開始4日でかなり消退し1週間でほぼ治癒した。

投稿者:KUSUat 22:36 | 日記

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