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2022年1月30日

思いがけない効能




思いがけない効能は稀に経験することが有るが、治療対象疾患以外の病気に効能を示す薬剤はいくつかある。抗てんかん薬ではクロナゼパムが顔面痙攣や本態性振戦に効いたり、バルプロ酸やトピラマートが片頭痛の予防に役立つこともある。ゾニサミドはパーキンソン病に効果がある。パーキンソン病の患者がてんかんのためゾニサミドを服用するようになって症状が改善されたことを疑問に思ったことより新たな効能が発見された。因みに発見者は日本人で脳神経内科医でした。ゾニサミドも日本の会社が抗てんかん薬として開発しましたが、最初国内では効能効果の判定が上手く行かず海外にわたり抗てんかん薬として市場に出ました。その後、日本でも抗てんかん薬として認められ使われるようになったのです。そして抗パーキンソン薬として認められ紆余曲折の経緯があったのです。抗うつ薬の塩酸アミトリプチリンは50年以上前からある薬ですが最近は抗うつ薬として使われることは殆んどありません。もっと使い易い薬が開発されたからです。ただこの薬は慢性頭痛に少量で効果が有ることは脳外科医や脳神経内科医の間では知られていました。片頭痛の予防に効果があり筋緊張性頭痛にも効果があります。変わったところでは持続性片側頭痛では解熱鎮痛薬であるインドメタシンだけが効果があります。他の鎮痛薬で効果が無くインドメタシンが効けば臨床症状と合わせて確定診断が可能です。

投稿者:KUSUat 14:42 | 日記

2022年1月14日

南加賀漢方研究会 心不全に役立つ漢方




心不全に役立つ漢方薬 京都大学附属病院循環器内科小笹寧子先生 心不全は年間120万人の方が新たに罹る病態で中央値は80歳です。一年以内に26%の方が再入院となります。また年間死亡率は23%と高率です。予後不良で死一歩手前の状態といって良いでしょう。その定義は簡単に述べると心ポンプ機能の破綻です。原因としては虚血性のものや高血圧由来が28%,25%と多く、ついで心筋症などがあげられます。対応する漢方薬では当帰芍薬散、牛車腎気丸、五苓散が考えられます。特に当帰芍薬散は頻脈にも有効で脈を減らし利尿剤の量もかなり減らすことが可能です。高齢になると様々な病気に罹り複数医療期間から投薬を受けます。全体として多剤服用することになり、薬剤による健康を損なう可能性が上がります。テオフィリンやβ刺激薬は脈を上げます。芍薬甘草湯は甘草の摂取過剰で偽性アルドステロン症をきたし血圧を上げます。NSAIDは腎血流を低下させ腎機能を落としたり胃腸機能に悪影響を及ぼし潰瘍をきたすこともあります。高血圧、頻脈、腎障害などいずれも循環器系に障害的に働きます。多剤使用については注意を怠ってはならないと考えます。私は心臓リハビリテーションに携わっていますが心不全診療では生活指導も大切です。貝原益軒の養生訓にある言葉では「身体は少しずつ労働すべし。久しく安座すべからず。毎日ご飯後に必ず庭のうち数百歩しづかに歩行すべし。雨中には屋の内を幾度も徐行すべし」があります。

投稿者:KUSUat 11:39 | お知らせ

2022年1月1日

2022年 年の初めに




年の初めに思いを新たにすることは有難い習慣だと思います。昨年を振り返り、それを踏まえての軌道修正や変更は大切です。
昨年は認知症を個別的に深く診ていくように心掛けて診療を進めるようにしました。簡単にパターンで分けず様々な検査も組み合わせて判断するようにしました。臨床的にはアルツハイマー病やレビー小体病として矛盾がない場合でも脳血流検査等をしてみると否定的な場合がありました。代表的な認知症は病名からして病理診断名なので症状や検査だけで全例に正確な診断をすることには限界があります。そのため必ず経過を追って修正していく必要があります。また病態が一つとは限りません。最近の例では10年以上診ていた多発性脳梗塞の方で歩きぶりや姿勢がパーキンソン病に似てきたのでDAT-SCANを行ったところパーキンソン病であることが分かりました。多発性脳梗塞は認知症をきたします。パーキンソン病は経過とともにレビー小体病に近づいて行きます。この方は新たにMLF症候群を呈する脳幹部梗塞も起こしました。昨年1月のブログで脳幹部梗塞と睡眠時無呼吸症候群(SAS)の関係を述べていますが、簡易PSG(終夜睡眠ポリグラフィー)を行ったところ重症のSASでした。多発性脳梗塞もパーキンソン病もSASもすべて認知症と結ぶ付きます。一つの診断をして漫然と経過を診ていくと大事なことを見逃す危険性があります。思いを新たにすることはやはり大切です。
昨年の診療では慢性期脳血管障害の患者さんで約6割が睡眠時無呼吸症候群SASであることが分かりました。今年はこの事実をまとめて学会誌に出して広く知ってもらい脳卒中治療に寄与できればと考えています。

投稿者:KUSUat 00:25 | 日記

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